2012年5月27日(日)第6回総会 記念講演:服部幸造(同大学人間文化研究科元教授) 片山氏による琵琶演奏

5月23日(日)、「市民学びの会」平成二十四年度総会の余熱を保ったまま、記念講演に移っていった。 ところで、今年は大河ドラマ『平清盛』があって、書店には源平関係の本が平積みにされていた。そこで、今回は、「市民学びの会」講演は、『平家物語』(以下『平家』とする)についての講義と琵琶の弾き語りの演奏で、本物の『平家』に触れてもらうことを企画してみた。

まず『平家』であるが、栄華を奢る平家が、頂点の福原遷都、清盛の悶絶死をへて、源義経に追われ、壇ノ浦に敗走し、海の藻屑と消えた、敗残の悲哀を描いた軍記物である。無常観を湛え、スケールの大きい、これぞ代表的国民文学である。そして、この物語を広めていったのが、小泉八雲『耳なし芳一』のように、全国を弾き語り流浪した、盲目の琵琶法師たちであった。
市民学びの会第一部の講演は、「『平家物語』と琵琶」と題して中世口承文芸の研究で多くの功績をおもちの、服部幸造本学元教授にお願いすることとなった。
目の不自由な法師たちが、長い物語を暗誦できるまでに積んだ徹底した修行や、検校や座頭といった厳格な階層組織について、また、九州で最近まで民家の竃祓いや遊芸についていた、筑前・薩摩の琵琶法師のことを紹介してくれた。そして、名古屋と『平家』に関連して、瑞穂区妙音通が、『平家』に登場する琵琶の名手「藤原師長」の、流刑地尾張での居所に由来することなどを、その語り口はまるで講談のようで、終始わくわくしたレクチャーであった。「市民学びの会」

第二部は、気鋭の筑前琵琶奏者片山星旭氏の弾き語りである。いきなり強烈な琵琶の弾き音と「祇園精舎の鉦の声…」の謡いで始まった。そして『那須ノ与一』。空に舞う扇を射る小気味のいい興奮を軽快なバチさばきで。次に一人残った、安徳天皇の母建礼門院を大原に訪ねる後白河法皇と女院の最後を描いた『大原御幸』を、太くときには高らかに歌い、激しさから静けさに転移した琵琶の音が、戦いの悲哀をうまく出していた。 有意義な質問も出してもらった、五十名の聴衆をしっかり引きつけたひとときであった。

(城)