「太平洋戦争開戦80年-開戦直前一ヶ月の日米関係を探る-」 報告

「市民学びの会」主催・オンライン市民講座  2021年12月5日開催
「太平洋戦争開戦80年-開戦直前一ヶ月の日米関係を探る-」 講師 門池啓史

 コロナ禍が2年近く続き、「市民学びの会」では、各サークルにおいて主にオンラインで開催してきた。各サークルでは毎回決まった会員が集まって、数名から十数名で開催されているが、戦争サークル(講座)だけは一般市民向けに、その都度会員を募り開催している。毎回20名以上の参加者があるが、主に中高年者であり、オンライン開催はハードルが高いと思われ、コロナ禍以降開催は行ってこなかった。
 しかし、オンライン講座の参加は決して難しくはなく、あの太平洋戦争が勃発してちょうど八十年となることもあり、去る12月5日に思い切ってオンラインで戦争講座を開催することになった。約40名の方の参加となったが大きなトラブルは発生しなかった。

 日本の歴史上で最も大きな出来事であったと思われる太平洋戦争だが、なぜ三百十万人もの日本人の死者、アジア全体では一千万人をも越えるといわれる死者を出した大惨禍が起こってしまったのか。その原因、背景に関しては知られているようであまり知られていないことも多々あり、今回は開戦直前の日米関係をテーマに中心に開催した。

 戦前、日本政府や軍部では誰もアメリカと戦争してまともに勝てると確信した者はいなかったと思われたため、開戦直前の日米間では何度も話し合いは持たれたが、日本、アメリカ、中国、イギリス、ドイツ、他各国の思惑が複雑に絡み合い、結果として開戦となってしまった。講座ではその開戦直前の日米間の、息詰まるような緊張した日々を説明させて頂いた。あまり知られていない事実も提示し、受講者の皆様には開戦までの日米関係を再考して頂けたならば幸いである。それは、現在未来の世界平和への大きな道筋となると確信するからである。

(ZOOM リモート発信)録画を公開しています。

以下URLをクリックしてご覧ください。
http://hum-ncu.com/record/20211205kado.mp4

12月5日(日)「太平洋戦争開戦80年ー開戦直前の日米関係を探るー」(ZOOM リモート発信)

日時: 12月5日(日) 14:00〜15:30  13:30開場

Zoomリモート発信: 名古屋市立大学滝子キャンパス一号館名古屋市立大学人間文化研究所内
主催: 名古屋市立大学人間文化研究科市民連携「市民学びの会」

題目: 「太平洋戦争開戦80年ー開戦直前の日米関係を探るー」

内容: あの太平洋戦争が勃発して80年が経ちました。
開戦直前、日米間では緊張した交渉が続けられましたが、結果として開戦となってしまったその原因、要因をこの講座では探ります。
知っているようで知られていない歴史を再考したく思います。

講師:門池啓史 カドイケヒロシ
博士(歴史社会学)
大学卒業後、サラリーマンを経てバブル経済前に中小企業の経営に携わる。バブル経済崩壊後、会社経営を知人に譲り、大学院にて多文化共生を専攻する。修士、博士課程を経て、大学理事・講師を務めながら、各地で市民講座の講師も担う。専門は歴史社会学だが、とりわけ日系アメリカ人と太平洋戦争の研究がライフワーク。著書に『日本軍兵士になったアメリカ人たち』他。

12月5日(日)13:30開場しますので接続状況を確認して待機してください。
質疑応答の時間を設けます。「チャット機能」をご利用ください。

6月2日(土)「市民学びの会」総会&交流会

名古屋市立大学人間文化研究科市民連携
「知」と「芸」に遊ぶ
「市民学びの会」総会&交流会

日 時 2019年6月2日(日)14:45より受付
総会&交流会  15:00〜17:00

場 所 名古屋市立大学桜山キャンパス西棟サクラサイドテラス
サクラサイドテラス周辺地図PDF

費 用 1,500円 (当日徴収、別に会の方から一部補助あり)
軽食とドリンク アルコールあり

申し込み 各サークル担当者にお申し込みください。

アトラクション
トリオ演奏  シャンソン
桑原京子(ピアノ)
VITO(パーカッション)
彦坂紀都(ヴォーカル)

【報告】別所良美教授 「持続可能な未来のための パラダイムチェンジとベーシックインカム(無条件所得)を考える」

今年度市民学びの会総会では、「持続可能な未来のためのパラダイムチェンジとベーシックインカムを考える」と題して、名古屋市立大学の別所良美教授による講演がなされた。別所教授の専門は社会哲学で、とりわけドイツの哲学者・社会学者で公共性論やコミュニケーション論で知られるユルゲン・ハーバーマスの研究に取り組んでこられた。別所教授はこれまでに大学院人間文化研究科長や人間文化研究所長などの要職を歴任され、学部・大学院の運営と並んで、ESD(持続可能な開発のための教育)研究に学部をあげて取り組むなど、研究活動の面でもリーダーシップを発揮されている。

本講演のテーマは、大きく分けて次の三つの柱に分けることができる。第一の柱は「ベーシックインカムとは何か」、第二の柱は「持続可能性をめぐる諸問題について」、第三の柱は「持続可能な社会のビジョン=「第三次産業革命」について」である。これらの柱で取り上げられるテーマは、そのいずれも私たちにとってきわめてアクチュアルな問題である。
本講演の表題には「パラダイムチェンジ」というタームが掲げられていることに注目してほしい。その意図するところは、われわれ人類が信じて疑わなかった資本主義的市場経済の下での無限の成長というイデオロギーからの脱却(すなわちパラダイムチェンジ)をはかり、再生可能エネルギーを基盤とした経済活動によって、地球エコシステムの循環の限界内で豊かさと幸福を発展・開発する社会(すなわち持続可能な社会)を目指すことなしに人類の未来はないとの警鐘にほかならない。

第一の柱は、近年わが国でも注目を集めつつある「ベーシックインカム(無条件基本所得)」をめぐるものである。「ベーシックインカム」がにわかに注目を集めている背景には、 AI(人工知能)やロボットなどのテクノロジーが飛躍的な進化をとげることにより、近い将来人間の労働が機械(ロボット)に置き換わることで失業が急増するとの予測がある(ジェレミー・リフキン著『大失業時代』)。しかしながら、機械化によって人の仕事がどのていど奪われるかについては、正確な予測は困難であり未知数の部分が多い。とはいっても、現在私たちが従事している仕事のかなりの部分が近い将来機械に取って代わられることはまちがいないと考えた方がよさそうだ。オックスフォード大学の研究チームによると、今後十〜二十年間に、アメリカの総労働人口の五割弱が機械に置き換わる可能性があるという。その中には、製造業などの単純労働だけでなく、銀行員、ファイナンシャル・アドバイザー、コンサルタント、法律家といった知的労働(専門職)も含まれているというから驚きだ。私たちはどんな仕事で稼ぎ、政府は社会保障制度をどう維持したらよいのか。この問いに対する答えとしてヨーロッパ諸国で浮上してきたのが「ベーシックインカム」という概念であり、これまでにいくつかの国や自治体ですでに実験的な試みがなされている。

「ベーシックインカム」とは、「無条件の基本所得」(Unconditional Basic Income)であり、「政治共同体(政府)が保障する普遍的な社会的人権」と定義される。生活保護などの社会保障と違って「貧困対策」ではないため、給付条件はなく誰でも「無条件で」もらえるということになる。この制度のメリットは、「無条件」で支給することによって社会保障制度をシンプルにし、行政上のコストを削減するところにある。さらに「無条件」で支給されるために受給者に「政府からの施し」というスティグマ(劣等感や負い目)を感じさせないという利点もある。要するに、社会によって存在と所得を保障されることによって、個人は自由で創造的な活動を行うことが可能になるというわけだ。しかし、最大の問題は財源をどうやって確保するかである。わが国における「ベーシックインカム」の導入に関しては賛否両論あり、今後の動向を注目したい。

第二の柱は「持続可能な社会とは何か」である。一九七二年にローマ・クラブが『成長の限界』を公表したとき、世界の人々は大きな衝撃を受けた。現状が続けば、人口増加と地球環境の破壊、さらには資源の枯渇などで、人類の成長は限界に達するという警鐘が鳴らされたのである。今でこそ、有限な地球、地球温暖化などさまざまな言葉が飛び交っているが、その起源はすべてこの『成長の限界』にあった。「持続可能」(sustainable)という概念自体も、これがきっかけとなって定着していったことにまちがいはない。『成長の限界』の 四〇年後、著者の一人、ヨルゲン・ランダースが『二〇五二 今後四〇年のグローバル予測』を発表した。本書は「ローマ・クラブの警告にもかかわらず、人類は十分な対応を行わないまま四〇年が過ぎてしまった」という危機意識から発している。「問題の発見と認知」には時間がかかり、「解決策の発見と適用」にも時間がかかる。そのような遅れは、ランダースが「オーバーシュート(需要超過)」と呼ぶ状態を招く。オーバーシュートはしばらくの間なら持続可能だが、やがて基礎から崩壊し、破綻する。
それでは、このような地球環境の危機(崩壊)から脱出するための具体的なビジョンをわれわれはどこに求めたらよいのだろうか。この問いに対する回答を示しているのが本講演の第三の柱、すなわち「持続可能な社会のビジョン」であり、それはジェレミー・リフキンの『第三次産業革命』で展開されたビジョンである。この著書でリフキンは、過去二回の産業革命の歴史から証拠を引用し、それに関連する出来事をプロットし、そこから未来を構想していく。さらに本書では、化石燃料や原発に依存した中央集権的な体制から、自宅で再生可能エネルギーを使って発電し共有するエネルギーの民主体制への変換をテコにして政治、教育、経済の新たなパラダイムシフトをめざすというビジョンが大胆に展開されている。

リフキンによれば、「インターネットという新しいコミュニケーション手段」に「再生可能なエネルギー」が結びつくことで第三次産業革命は起こる。周知のように、ドイツのメルケル政権はリフキンを政策ブレーンに招き、脱原発をはじめとして中央集権型から分散・水平型のネットワーク社会へ向けてパラダイムシフトに踏み切っている。この革命に成功した未来社会は次のようなものになると予想される。再生可能エネルギーを建物や家が生み出し、余った電力の一部を水素として貯蔵し、天候不順などへ対応する。各家庭やビルで生産された電力は効率化された配電網を活用して売買される。再生可能エネルギーを活用したプラグイン充電式や燃料電池式の車両で移動し、各地に配置された充電ステーションで充電する。これが第三次産業革命で生まれる物語の大筋である。過去の産業革命のプロセスを考慮すると、移行期間は半世紀ほどかかると予測されている。
リフキンは、資本主義の原理に基づいて生産性を極限まで最適化すると、モノを生産するためにかかるコスト(限界費用)が限りなくゼロ(無料)に近づくはずであり(リフキン著『限界費用ゼロ社会』)、そうした社会が実現すると資本の動きが発生しなくなるため、資本主義が成立しなくなってしまうという矛盾を指摘している。それにともなって資本主義は縮小し、資本主義市場でも政府でもない、シェアの意識に基づいて共同する自主管理活動の場「協働型コモンズ」が台頭しつつあるとの予測がなされる。

最後に、今回の講演における別所教授のパワーポイントを駆使してのプレゼンテーションは詳細かつ広範にわたるものであり、私としては大いに啓発されるところがあったことを申し添えてむすびの言葉としたい。

(村井忠政名古屋市立大学名誉教授)
名古屋市立大学人間文化研究科「市民学びの会」

6月16日(土)総会記念講演「持続可能な未来のための パラダイムチェンジとベーシックインカム(無条件所得)を考える」

総会記念講演
別所良美教授
「持続可能な未来のための パラダイムチェンジとベーシックインカム(無条件所得)を考える」

日時:平成30年6月16日(土)14:00〜16:00
場所:名古屋市立大学滝子キャンパス 1号館201号室
参加費:無料(お気軽に参加してください)

»6月16日(土)総会記念講演「持続可能な未来のための パラダイムチェンジとベーシックインカム(無条件所得)を考える」ご案内チラシ

講演内容

近年、「持続可能性」という言葉が氾濫しています。国連が2015年に発表した「持続可能な開発計画SDGS」が各国の政策に影響を与えていますし、少子高齢化による労働人口の減少が引き起こす日本経済の持続不可能性を克服しようとアベノミクスを唱えてきた政府は、近頃、「第4次産業革命」、「超スマート社会(SOCIETY 5.0)」というフレーズでIOTやAI技術の推進をめざしています。他方では、AIが人間から職場を奪うといった懸念が多方面から語られています。まさに混迷した現代社会がどこに向かおうとしているのか(パラダイムチェンジ)を整理し、その中に「ベーシック・インカム」を位置づけてみたいと思います。(別所)

講師別所良美教授略歴

1956年生まれ。ドイツ近現代思想。カント、ヘーゲルなどのドイツ古典哲学とアドルノやハーバーマス等のフランクフルト学派を研究し、現代の民主主義やナショナリズムとグローバリズムについて考えてきたが、最近はそれらの問題を持続可能な社会とベーシック・インカムという視点から考察している。
著書等:共著『戦争責任と「われわれ」』1999年、ナカニシヤ出版。『ESDと大学』2013年、風媒社。論文「ベーシック・インカムから考える少子高齢化社会」2017年、『ジェンダー研究』第19号

 

2016年5月27日 第11回総会 10周年記念行事

去る5月27日、市大病院内のサクラテラスにおいて、「市民学びの会」の総会と設立10周年記念行事が開催された。市民学びの会は名古屋市立大学より、市民に開放した学びの場を設立したいとの依頼を受けて、主に名市大関係者が中心となって2007年に発足した。発足当初は哲学、移民、戦争、子育て、英語関係の学びのサークルが作られ、主に中高年者が会員となって運営された。その後いくつかのサークルが発足し、現在は10サークルを超えるものとなっている。会員数も延べ200名前後にのぼる。
設立後節目の10年を経たということで、通常の総会の後、10周年記念行事を行った。記念行事として、日本古来の雅楽の会である「アユチ雅楽会」の華麗な奏楽と神楽舞が披露された。その後会員相互の親睦を図ってパーティが開催され、最後にはくじ引きによる景品も全員に渡された。参加者は約50名となった。

村井忠政市民学びの会会長より挨拶の後、通常総会が開催された。総会終了が終わって、伊藤恭彦名市大副学長からのご挨拶を頂いた後、アユチ雅楽会(代表は鬼頭リキ氏)のパーフォマンスが始まる。因みに、雅楽の世界では演奏と踊りのことを演舞とは呼ばず、奏楽と神楽舞と言うとのことである。奏楽と神楽舞を奏でていただいたのは、アユチ雅楽会8名(担当:楽太鼓、龍笛、鳳笙、篳篥、楽琵琶、舞人、歌唱)と名古屋市博物館サポーターMAROの名市大学生6名(担当:催馬楽桜人の歌唱)の総勢14名からの皆さまである。雅楽は、千年以上にわたり受け継がれてきた日本の文化遺産であり、 古くから日本に伝えられてきた歌や舞である。 そして、5世紀から9世紀にアジア大陸から伝えられた舞や音楽が合体して、今に伝わる雅楽の原型になっているとのことだ。
まず、管弦平調音取(かんげんひょうじょうねとり)が演奏された。これは雅楽の演奏楽に先立って行われる一種の「音合わせ」が、芸術的、形式的に高められて奏でられることになったようである。次に管弦平調越殿楽(かんげんひょうじょうえてんらく)が奏でられた。これは雅楽の曲の中で最も有名な曲であり、初詣や結婚式などのおめでたい場面で、耳にすることが多い曲であろう。
二曲目は神楽舞浦安の舞(がくらまいうらやすのまい)が巫女による神楽舞として行われる。浦安は「心が安らか」という意味。昔、日本のことを「浦安の国」といったのは、風土が美しく心安らに暮らせる平和な国であったからとされている。日々の平穏無事、国の平和を祈る舞である。そして最後には、催馬楽桜人(さいばらさくらびと)が奏でられる。催馬楽とは、平安時代に生まれた「謡物/歌物(うたもの)」と呼ばれる雅楽の一つの種類である。『催馬楽 桜人』は、現在の名古屋市南区の桜台、桜本町あたりの歌が都に伝わって雅楽曲になり、平安時代に流行したとされている。『催馬楽 桜人』は、長らく廃絶歌だったが、昭和に入り復興され、現在では、名古屋市の無形文化財に指定されている。
普段なかなか正式な雅楽を見ることの少ないであろう我々にとって、雅楽の服装や伝統楽器による奏楽と神楽舞は大変興味深いものであったと思われる。まさに日本の伝統音楽に酔いしれたひと時であった。

その後、発足当初からお世話を頂いている別所良美人間文化研究所所長からのお祝いの言葉を頂いた後、森正名誉教授から乾杯のご発声を頂き、立食が始まった。日ごろサークル間同士の交流があまり多くはないため、会員皆さまの相互の交流、親睦には大変よい機会となったと思われる。
最後には、くじ引きによる全員の景品贈呈が行われて、河面祥三郎理事によるお開きの言葉により会は終焉した。

文責:「市民学びの会」代表理事 門池啓史

「市民学びの会」 総会 10周年記念行事

学習サークル活動を行っている会員の交流会を行います
詳細と申込については、各学習サークル担当者にお願いします

日 時:2017年5月27日(土)16:00~18:30
会 場: サクラサイドテラス(桜山 名古屋市立大学病院 敷地内)
会 費: 2,000円 総額(4,000円)のうち半額が当会より補助されています。

プログラム: 第11回 総会 / アユチ雅楽会による演舞 / 交流会(会食)

2016年5月15日(日)/第10回 総会・講演会・森 正氏「私のライフワーク = 布施辰治研究 ─ 人道の弁護士・社会運動家に惹かれて ─」

第10回 総会・講演会

講師:森 正 (もり ただし)氏 (名古屋市立大学 名誉教授)

私のライフワーク = 布施辰治(ふせたつじ)研究
─ 人道の弁護士・社会運動家に惹かれて ─

講師プロフィール
1942年 和歌山県新宮市生まれ。中央大学法学部に進学し、名古屋大学大学院公法学教室にて憲法を専攻、博士課程へ進学。
1969年 名古屋市立短期大学に着任
1996年 名古屋市立大学人文社会学部教授。
2003年 ライフワークに専念するために早期退職。

主 著
治安維持法裁判と弁護士 (日本評論社) / 聞き書き憲法裁判 (東研出版)
私の法曹・知識人論 (六法出版社) / 司法書士と憲法 (民事法研究会)
マルセ太郎 記憶は弱者にあり (明石書店) / 評伝 布施辰治 (日本評論社)

日時:2016年5月15日(日)
総 会 13:30~13:50
講演会 14:00~16:00

場所:名古屋市立大学 滝子キャンパス 1号館2階201教室

※ 事前申し込み不要
  参加費無料

2015年5月23日(土)「戦後70年、今一度あの戦争を考える」

名古屋市立大学人文社会学部・大学院人間文化研究科「市民学びの会」は、2007 年 9 月に発足して幅広い活動を続けている。「学びたい市民」と「市民に学ぶ場所・機会 を提供する名古屋市立大学」を結ぶ市民主体の団体である。 5 月 23 日午後、名古屋市立大学滝子キャンパス 1 号館 201 教室で「市民学びの会」 恒例の企画が開催された。懐かしい教室には多くの参加者が詰めかけた。

今回のテーマ は「戦後70年、今一度あの戦争を考える」 である。 まず、ノンフィクション作家の大野芳 さんが「開戦前夜の近衛文麿」について 講演した。話の始まりは「貴公子近衛文 麿」であり、2・26 事件から近衛内閣の 誕生、日米交渉と御前会議、開戦へと続 く。短い時間の講演のなかで、大野さん 独自の「史観」も披露され、多くの論点 を提起する講演であった。

その後、大野 さんと当会代表理事の門池啓史さんとの対談となり、講演で提起された論点がどのよう に深められるか期待して耳を傾けた。 対談のテーマは「開戦直前の日米関係」である。配布資料の年表やキーワード解説も 交え、ハルノートや太平洋戦争勃発に至る経過がいくつかのエピソードの紹介を含めて 議論される。近衛文麿や松岡洋右、木戸幸一などの「人物像」、開戦前夜から日米開戦 に至る経過など、二人の見解、「史観」は異なるところも多かった。議論がかみ合わず、 それが対談を面白くもさせていた。見解の相違は当然として、企画の趣旨がもうひとつ 分かりにくかったことが、「辛口コメンテーター」として残念であった。

戦後 70 年、今一度あの戦争を考えること、悲惨な戦争に至る歴史を振り返ることは、 大切な課題であるのは言うまでもない。門池さんは「もう一度学ぼう太平洋戦争への道」 というテーマで、市民学びの会「戦争シリーズ」を続けてきた。今回の講演と対談は、 その一環として企画されたようだ。なぜ太平洋戦争に至ったのか、戦争を防げなかった のかを、隠された資料を発掘し、歴史的事実を明らかにすることは重要な課題だ。その 際、戦争をどのように評価するか、「戦争史観」が問われることになる。講演や対談で、 この点があいまいなまま議論されたのに、いささか違和感をもった。 大野さんが講演のなかで「長州がキ―ワ―ド」と繰り返していたのが印象深い。戦後 70 年、戦後政治とりわけ戦争との関わりを考えると、岸から安倍へと「長州」が再び 注目を集めているようだ。この点を含めて質問しようとしたが、つい遠慮してしまった。

(2015 年 5 月 25 日 山田明名誉教授)