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佐野直子准教授「途上の言語―イタリア・ピエモンテ地方のオック語への旅」

第8回  サイエンスカフェ 2008年1月27日(日)

テーマ: 「途上の言語―イタリア・ピエモンテ地方のオック語への旅」

講師: 佐野直子准教授

サイエンスカフェ以前から会の活動は知っていましたが、今回のタイトルに引かれ初めて参加しました。私たちが毎日何気なく、あるいは意識して使っている言語が、人間の生活や文 化、歴史にどれほど重要かと、益々強く思うようになっているからです。 イタリアの山岳地帯の少数派言語、オック語の成り立ちから変遷、現在の状況などをお聞きしました。佐野先生が現地取材の際、日本人女性が何しにこんな辺鄙な場所 に来たのかと怪しまられた時、オック語の歌を一緒に歌って、一気に疑いが晴れたことなど、言葉がいかに人と人の関係を繋げるものかと実感。最近、若者たちでオック 語の歌詞で音楽を作るのが流行し、CDで少し聴かせてもらいましたが、時間があれば1曲聴きたかったくらい。で、日本でもこの数年、沖縄の言語を取り入れた曲が人気 を呼んでいるのと同じような現象ではと、面白く思いました。

イタリアでは「言語的少数派保護法(482法)」(1999年)が制定され、オック語など少数派言語が明記され、補助金もどんどん出され、保護する運動が広 がったものの、さまざまな問題点もあると話されました。ひょっとしたらこのオック語って何百、千?年後の日本語に通じるかも、と身近に考えてしまいました。今、世 界の少数言語がどんどん消えていく中、日本語を話すのは日本だけ。「多文化・多言語主義」に賛成ですが、では狭い地域でしか使われない言語をどう活用し、残してい くかとなると、正直わかりません。「世界遺産」として自然や街並みが保護され、こういうものは貴重だと世界の人たちに認識されていますが、少数言語も同じよ うに大事なものだと思います。サイエンスカフェ
2時間があっという間でした。この先、オック語がどうなるか気になり、「地域によってバラバラなオック語を一つに統一してきちっとした言語にしたら残るのでは」 と帰りがけに先生に話しかけてしまいました。「無理に統一を図らず、オック語を使う人々が、ああだ、こうだとどうしたらいいかと繰り返し議論し続けることが、この 言語が生命力を保つエネルギーになるでしょう」と返して頂きました。ありがとうございました。

白石