Archive for 12月, 2008

有賀克明教授「科学ってこんなにおもしろかったの!?―理科ぎらいで、ああ、損した!―」

第19回 サイエンスカフェ 2008年12月14日(日)

テーマ: 「科学ってこんなにおもしろかったの!?―理科ぎらいで、ああ、損した!―」

講師: 有賀克明教授

サイエンスカフェ 12月のサイエンスカフェは「科学ってこんなにおもしろかったの!?-理科ぎらいで、あぁ、損した!」と題して、有賀克明教授による講義が行われた。奇しくも4名の日本人科学者が受賞したノーベル賞の授賞式のニュースが重なり、科学を再考するよい機会となった。
始めに、科学とは程遠いと思われるような子どものおもちゃが数々飛び出し、会場の参加者はひとしきり子ども時代に戻って遊んだ。会場の雰囲気が和んだところで、次に取り組んだのは理科の試験問題。科学離れが叫ばれて久しい日本の中学生が実際に受けたテストはなかなか難しかった。関係のないように見られる「おもちゃ」と「試験問題」の間に、日本人の科学離れについての連関性がある、というのが有賀教授の論である。科学を学ぶことによって我々が得るものの一つは科学的思考や論理的思考なのであるが、その根っこは子ども時代のおもちゃにある、というのである。おもちゃで遊びながら、「なぜ?」の芽が育つ、ということだ。便利になった日本で「なぜ?」の芽が育ちにくいというのはよくわかる。
決して理科が好きだったとは言えない私にとって、タンポポや蝶々についての有賀教授の説明は、難しい言葉を使わないわかりやすいものであり、素朴な「なぜ?」を埋めてくれるようなものであった。と同時に、植物や昆虫が合理性を追求しながら生きる姿を「生きるために生きる」と説明された有賀教授の言葉に、科学の本質を垣間見た気もした。科学を学んだその先には深い哲学に通ずる道が用意されているのかもしれない。
会場の約20名の参加者が熱心に講義に聴き入っておられる姿に、学びへの意欲の強さを感じ、刺激を受けることができたことも書き添えておく。

梶田美香(同研究科博士後期課程)

土屋勝彦教授「オーストリアの現代作家たち」

第18回 サイエンスカフェ 2008年11月30日(日)

テーマ: 「オーストリアの現代作家たち」

講師: 土屋勝彦教授

サイエンスカフェ11月のサイエンスカフェは「オーストリアの現代作家たち」という題で、土屋勝彦先生による講義が行われた。最初に、トーマス・ベルンハルト、ペーター・ハントケ、イェリネク、ペーター・ローザイなど著名な現代作家たちについて、各作家の生い立ち、文学の特徴、社会的および文学的な価値評価などについて詳しく説明がなされた。

歴史的に見ても、共生・調和を志向する多民族国家たるハプスブルグ王朝の伝統を受け継ぎ、ウィーンの芸術家たちが政府や社会規範と一体化する傾向がある中で、文学作家たちは公権力との距離を置いていること、またドイツとの関係を重視しつつ、自らのアイデンティティを模索する中で、二重化された自己の葛藤をエネルギーに変えて、言語そのものによって世界を再構築する試みを行っていることを知り、オーストリア文学とは、多元的な価値の総集であることをあらためて感じた。

講義の後は、参加者から積極的な質疑応答がなされた。若者の活字離れが進んでいる現状や、今後の文学のあり方を危惧する意見も多い中、最後に、先生は文学研究の意義について述べられた。「言語によって構築される世界は無限である。現実を前に言葉を失うか、言葉を使ってそれを超えていくかが作家たちに問われている課題である。そして、その中で、文学研究とは、優れた作品に触れ、感動したことに責任を持ち表現することである」と。

文学研究を行う一人として、心が奮い立った。豊かな時間を過ごすことができた。

野田いおり (同研究科博士前期課程)