Archive for 2月 23rd, 2009

筒井 正さん「城下町名古屋の生活空間論」

第21回 マンデーサロン 2009年2月16日(月)

テーマ: 「城下町名古屋の生活空間論」

講 師: 筒井 正さん 「市民学びの会」会員

城下町名古屋の生活空間論

今回のサロンは、新修名古屋市史民俗部会専門委員を務めた筒井正さんが「城下町名古屋の生活空間論」と題して報告した。

昨年11月の市民学びの会・ミニ講座「名古屋の伝統産業を支える職人たち」が好評であり、テーマを広げて報告してもらうことになった。今回、学びの会と研究所・サロンとの「つながり」ができたので、これからの活動に活かしていきたい。学びの会メンバーや筒井ファン?など20名近くの参加があった。

来年は名古屋開府400年であるが、報告で城下町名古屋がどのように形成されたか、武家屋敷地・町人地・寺社地などに分けて示された。とりわけ長年の調査にもとづいて町人地の町屋と閑所(かんしょ)について、詳細な説明がなされた。閑所(会所)は町屋の街区の中心にできる生活空間・路地空間であり、コミュニティの場であるという。名古屋特有の「閑所」についての研究は、名古屋の歴史、名古屋学を考えるうえでも重要な問題提起といえよう。

そのほか「芸どころ尾張」の中心・大須界隈についての説明も興味深かった。江戸から明治・大正、そして昭和に至る遊郭の歴史、大須から日本一の中村遊郭への歩みも、またじっくりと聞きたい話であった。ビジュアルな報告と質疑により、充実したサロンとなった。

山田 明 (同研究科教授)

寺田元一教授 「18世紀フランスにおける大学とカフェ」

第21回  サイエンスカフェ 2009年2月15日(日)

テーマ: 「18世紀フランスにおける大学とカフェ」

講師: 寺田元一教授

「大学」と「カフェ」との間にどのような接点があるのだろうか。今回の講演で、18世紀フランスにおいては、大学とカフェには「知」を扱うという共通点あることが明らかになった。しかし、確かに両者には「知」という接点があるのだが、神学・法学・医学に関する伝統的な知を継承する場である大学と、政治から噂話まで世俗的な知が飛び交い、自由に語り合いながら新しい知を生み出す場であるカフェとでは、知のあり方が異なっていた。また、私的な同業組合である大学と、誰でも参加できる公共圏であるカフェには決定的な違いがあった。

講演を通して、現代のカフェという場の持つ意味について考えさせられた。18世紀フランスにおいては、大学をエスケープした学生や作家志望者などの社会の「王道」を歩めない人々が多く集っていたようである。そのネットワークは、「世論」を形成し、変革の萌芽が生まれ得る力を潜在的に持っていた。ところが、現代のカフェは、庶民の休息の場や雑談の場となっているように感じる。果たして、カフェから意義のある交流が生まれたり、意見を戦わせた結果として「総意」が形成されたりすることがあるのだろうか。

ネット世界で繋がるのは便利で手軽ではあるが、あらゆる立場の人々が外に足を運んでカフェなどの公共圏を最大限利用し、活気に溢れた人生、ひいては社会を現出できないものかと思った。学ぶ意欲という共通点を持つ様々な年齢層の参加者を目にして、そして18世紀とは異なり、大学がそれを牽引するという新しい形式を体験して、期待が膨らむ講演会だった。

艸田理子(人文社会学部国際文化学科2008年度卒業生)