Archive for 4月 23rd, 2009

伊藤恭彦教授「貧困の放置は罪なのか―国境を越える正義の可能性」 

第23回 マンデーサロン 2009年4月20日(月)

テーマ: 「貧困の放置は罪なのか―国境を越える正義の可能性」

講 師: 伊藤恭彦教授

マンデーサロン今年度最初のマンデーサロンが4月20日に開催された。4月に赴任したばかりの伊藤恭彦教授が「貧困の放置は罪なのか―国境を越える正義の可能性」と題して報告して、活発に質疑が行われた。

まず21世紀初頭の世界の貧困問題を数字で示して、国境を超える財移転政策、例えば ODA政策の倫理的根拠の考察が報告の課題とされた。私たちの日常生活に潜む常識としてマル サス主義、リバタリアニズム、ナショナリズムについて検討し、とくにリバタリアン的所有の問題点 として5点あげる。そして「常識」から正義へ、国際公共政策の改革を展望する。慈善ではなく、正義に基づく国境を越える財移転政策について、ODA政策や国際連帯税などの新たな政策を紹介する。おわりに、コスモポリタリズムと関わらせて、地球市民としての倫理的課題を提示した。

多面にわたる報告を紹介するのは困難をきわめるが、「貧困の放置は罪なのか」「国境を超え る正義の可能性」という問題提起は、32名の参加者の知的好奇心を大いに刺激するものであっ た。初めての参加者も多く、今年度最初にふさわしいサロンであった。

山田明(同研究科教授)