Archive for 11月, 2009

2009年人間文化研究所5周年記念シンポジウム

2009年人間文化研究所5周年記念シンポジウム

11月28日14時から人文社会学部棟201教室にて標記シンポジウムが開催された。博士後期課程の山田陽子さんが司会をつとめ、まずは吉田一彦研究科長が挨拶をした。ついで長野県下伊那郡泰阜村の松島貞治村長が「安心の村は自律のむら」と題して記念講演を行った。

泰阜村は人口1949人の高齢化率37.6%の小さな村であるが、65歳以上の人口は減少しつつあり、高齢化は乗り切った。泰阜村は在宅福祉の村として全国的に有名である。人間にとって「老い」「死」は避けることのできない現実である。高齢者の願いは「住み慣れた家で最 期を迎えたい」であり、そのために医療より福祉、在宅福祉に力を入れてきた。役場は山村社会の「拠り所」であり、合併を選択せず自律のむらを目指してきた。泰阜村は戦前、満州開拓に1200名の村民を送り出し、638名もの人が犠牲となった。国策にのらず、自分の足で歩む以外ないというのが結論だ。松島村長の講演はじつに示唆に富むものであり、テープを起こして詳細に紹介していきたい。

休憩をはさんで、「持続可能な社会」をテーマにパネルディスカッションを行った。パネラーは松島村長のほか、本研究科から成玖美准教授、村井忠政名誉教授、福吉勝男名誉教授、コーディネーターを私がつとめた。両名誉教授は、人間文化研究所の初代と2代目の所長である。3代目を私がつとめている。まず記念講演に対する感想・質問を手短に述べてもらい、会場からの質問を含め、村長にじっくり回答してもらった。記念講演とともに、延べ60名の参加者から好評のようであった。母の死の直後で疲れ果てていたが、無事にシンポジウムを終えられ嬉しいかぎりだ。

山田 明 (同研究所長)

平田雅己准教授「銃社会アメリカの現状と展望」

第30回 サイエンスカフェ 2009年11月15日(日)

テーマ: 「銃社会アメリカの現状と展望」

講 師: 平田雅己准教授

サイエンス・カフェ11月のサイエンスカフェでは、米国の政治学がご専門の平田雅己先生による講義が行われました。

全世界の銃のうち約4分の1が米国で所有されている事など現在の米国における銃の実態の紹介に続き、米国で広く銃が保有されている背景には、狩猟・射撃の愛好やコレクターの存在、入手しやすい正当防衛の手段として銃が認識されていること、憲法上の権利意識、政治的にも強い影響力を持つ全米ライフル協会(RNA)の存在など、文化・法律・国民の意識や政治的側面など様々な要因があるそうです。

資料として配布された、米国のテレビ局による、銃規制をどの程度厳しいものにすべきかについての世論調査の結果や、州によって異なる銃規制政策を示した地図などを用いたお話は、とても興味深いものでした。その後、2008年の大統領選挙で「個人の銃所有権を認める一方で、銃規制法の強化を支持する」立場をとったオバマ候補の選挙戦に銃器の問題がどのように関わったのか、現在の政権では銃規制よりも国民皆保険制度などの政策が優先度の高い政策と位置づけられていることもあり、2010年の中間選挙までは大きな政策の転換は見られないだろうという展望が示され、銃規制を強化していくためには、国民一人一人の意識を変えていくことが重要なのだということを学びました。

質疑応答では、質問者自身の見解や体験を交えた、考えさせられる質問が多く出され、さらに理解が深まったように感じます。約2時間、とても充実した時間を過ごせました。

田ノ室 芙美(同学部生)