Archive for 3月 24th, 2012

平田雅己准教授「オバマ政権時代の銃器政治と運動事情」

48回サイエンスカフェ 2012年3月18日(日)

テーマ:「オバマ政権時代の銃器政治と運動事情」

講師:平田雅己 准教授

昨年1年間の在米研究を終えて帰国された平田先生が講義されるサイエンスカフェに参加しました。これは前回2009年の続編となるもので、最新データ資料や滞在中の出来事を交えてのお話しでした。サイエンスカフェ

9.11から10年後の世論調査では、米国民の間に自衛意識が強まり、公共の場の監視カメラを71%が容認し、空港でのセキュリティチェックもより厳しくなってきました。自由の国アメリカが「自由」より「安全」を優先するようになってきたのでしょうか。そして主要都市の重犯罪率低下傾向も、銃規制派には逆風だというのです。銃規制を公約に掲げたオバマ大統領でしたが「現実主義的理想主義者」であるが故、対策は後回しになり、更に中間選挙の共和党勝利によって手が付けられずにいる状況下、2011年1月アリゾナ州で6人が死亡した痛ましい銃乱射事件の背景は、銃規制の甘さを写し出していたと詳しく教えていただきました。

こうしたアメリカの銃社会実情を聞くのは今回が初めてでした。歴史背景や日本では理解できない米国民の銃依存に、疑問が広がるばかりでした。政治に期待ができず、状況改善はとても難しいのでは、と気が塞ぎかけた時、滞在中の平田先生と、ある一人の銃撃事件被害者青年との交流の話に、とても興味を惹かれました。25歳の青年は悲劇を経ながらも現在、銃規制運動の中心で行動を続けているそうです。その勇気と社会や人への肯定的な可能性を見出そうとする生き方は印象的でした。

そしてこの日ゲストとして、1992年留学先のルイジアナ州で銃の犠牲となった高校生服部剛丈君のご両親が招かれていました。服部ご夫妻は銃規制を訴える活動をしながらYOSHI基金を設立し、「銃のない社会」を学んでもらいたいという思いで毎年アメリカ人高校生の招待を続けてこられました。
今回先生が講義してくださった大きな社会問題と、それらの改革に取り組む個人の行動力の関連付けは、アカデミックな講義にとどまらず、NPO活動に携わる私へのモチベーションを捉え直させてくれるよいメッセージでもありました。
遠い国での出来事としてしまいがちな銃問題。「銃犯罪は日米安保下の日本でも起こりうる。服部君のことも今後、郷土の戦争平和・暴力をめぐる歴史の一つとして位置づけ記憶に残して行きたい。」と最後に先生が述べられたことが心に残りました。

熊本亮子(「ピースあいち」ボランティアスタッフ)