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吉村公夫教授「社会福祉をめぐる動き(ここ40年あまりの日本の動き)―同時代を生きてきて―」

45回サイエンスカフェ 2011年11月20日(日)

テーマ: 「社会福祉をめぐる動き(ここ40年あまりの日本の動き)―同時代を生きてきて―」

講 師: 吉村公夫教授

人口減少、少子高齢化と言われる現代、社会福祉への関心や重要性はますます高まっているのではないでしょうか。

この度の「サイエンスカフェ」では、先生が研究に携わってこられた、1970年以降の40年間にスポットを当て、社会福祉分野の法整備の歴史や制度の変遷をたどりました。いくつかの“転換点”を概観する中で、こうした現代、そして近い将来の日本の社会福祉を考える、有意義な時間を過ごすことができました。サイエンス・カフェ

特に印象深かったのは、1986年に国際社会福祉会議が東京で開催された時のエピソードです。会議参加者が特別養護老人ホームを視察した際、「寝たきり」の現状に驚いたとのこと。海外では、高齢者は亡くなる前まで「生活」する時代、目前の光景は病院同然でした。以降、「寝かせきり」と表現したそうですが…日本におけるソーシャルワーカーの資格創設につながり、これを機に少し前進したと言えます。 また、社会福祉制度・政策は、諸外国の動向や、その時々の政治に大きく影響を受けているということも、実感しました。

そして、「法令や制度の整備がすべてではない」ということを、改めて考えた機会でもありました。法令をいかに運用していくのか、現場(利用者、市民)の小さな声をいかに国へ届け、国全体での改善へ結び付けていくのか、行政が常に背負う課題であり、果たしていくべき役割だと思います。

講話の最後には、先生から、今、農作物や工業製品等への関税で話題となっているTPPについて、医療も議論の対象になり得るとのお話をいただきました。規制緩和により、公的医療保険制度は崩壊しかねません。 社会福祉が政治のツール等になることなく、より必要性の高い方々が、より質の高いサービスを受けられるものであって欲しい、そう願ったひと時でした。

松永 亜紀(同学部卒業生)