印刷 印刷

梶田美香さん「地域におきる芸術教育の可能性―小学校からの実践報告」

マンデーサロン 2010年3月15日(月)

テーマ: 「地域におきる芸術教育の可能性―小学校からの実践報告」

講 師: 梶田美香さん(同研究科博士後期課程)

本学大学院博士後期課程の梶田美香さんを講師に開催された。前半は、梶田さんが小学校で実践しているプログラムに沿って進められた。初めのグランドピアノの生演奏を聴きながら、音楽教室というこじんまりした空間であったせいか、「音」は物体の振動が空気の振動として伝わることを改めて実感していた。iPodやケータイで音楽を聴くのでは味わえないであろう、空気の振動を皮膚で感じるような一次的経験が子どもの発達過程において重要である、という講師のメッセージが込められているようにも感じた。

続くヤマハミュージック東海の佐橋さんの「チェンバロは叩くのではなく引搔いて音を出す」「グランドピアノはレペティションレバー機構によって鍵盤が素早く戻る」などのピアノの仕組みに関する話も、とても興味深いものであった。さらに、演奏された曲のイメージから題名をつけてみたり、グランドピアノの周りでハンマーが弦をたたく様を目の前で見たり、受動的のみにならないよう工夫されていたが、子どもたちとは異なり、目の輝きや反応がやや鈍っている聴衆を前にお二方ともやりにくかったのではないかと思う。

後半はパワーポイントによる報告で、音楽など芸術の専門家が、外に出かけて行って芸術普及活動を行う「アウトリーチ」について説明がなされた。梶田さんは、このアウトリーチを小学校で実施するにあたり、「総合的学習」における一過性的な活動にとどめるのではなく、音楽科教育の中に位置づけようと、意欲的に取り組まれている。特に「鑑賞」だけではなく「創作」すなわち曲作りまで行うことで、子どもたちの音楽に対する意識が大きく変化したであろうことが推察できる。おそらく今後は実践による効果をどのように客観性をもって評価するか、について検討されていくことと思い、研究の発展に期待している。

野中 壽子(同研究科教授)