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土屋勝彦教授・田中敬子教授・山本明代教授「世界文学におけるオムニフォンの諸相」

Posted By human On 2013年1月31日 @ 14:37 In マンデーサロン | Comments Disabled

マンデーサロン 2013年1月29日(月)

講師: 土屋勝彦教授・田中敬子教授・山本明代教授

テーマ: 研究プロジェクト報告会(1) 「―シンポジウム「世界文学におけるオムニフォンの諸相」について」

オムニフォンとは、「あらゆる言葉が同時に響き渡る言語空間」において、言語的コミュニケーションの中枢となる規範言語に抗い、少数言語に隠された文学的機能をすくいあげるという意味がある。質疑では、少数言語が母語を超える「揺らぎ」の可能性についての議論が主なトピックとなった。方言や土着の言葉で書かれた芸術作品に触れた際、一種のノスタルジアを感じたり、その異質性からエキゾチシズムを掻き立てられたりといった経験は、誰しもあるだろう。それが一種の「揺らぎ」であり、社会化の過程で失った、言語を介さないコミュニケーションに基づく世界との一体感への、母体回帰のような感情へ結びつく。

「少数言語」は、あらゆる感情を伝える可能性を秘めた文節不可能なツールとしての「声」と、文法、発話、理性的構成などのルールを無視すれば即、理解不可能に陥るもろさをひめた「規範」との、いわば中間の領域にある。失われつつあるマイノリティとシンクロしようとする文学的試みは、現在の「われわれ」を形作る源となった「根源」を遡上し、「いま」を知る可能性へと繋がる。それは「退行」ではなく、新たなアイデンティティのあり方を見つける可能性へ向かって開かれているといえよう。

山尾 涼(同研究科研究員)

マンデーサロン


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