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阪井芳貴教授「沖縄の祭りと芸能」 

第3回サイエンスカフェ 2007年8月19日(日)3

テーマ:  「沖縄の祭りと芸能」

講師:  阪井芳貴教授

サイエンスカフェ

日本各地で記録的な猛暑がTVニュースを賑わす8月19日に開催された阪井先生による「沖縄の祭りと芸能」も気温に負けない位の熱気を帯びていました。参加者の年代も南沙織の年代から安室奈美恵の年代と幅広く、当然、参加者の沖縄への関心事もさまざまで、最後の質疑応答を拝聴すると歴史、文化、親族形態、戦争問題などな多岐にわたっていたようでした。それをまとめる先生はさぞかしご苦労されたことでしょう。
今回はお盆明けということも考慮してかどうかは定かではありませんが、沖縄の神様を中心としたお話を、石垣島の「アンガマー」や沖縄の各地にある「御嶽(ウタキ)」などを例に挙げて分かりやすく解説していただきました。
サイエンスカフェ
沖縄県が観光立県となり、最近、沖縄には「青い海と異国情緒漂う楽園」といったイメージが定着してきていますが、現実は自然災害との戦いを独自の信仰観や祖先観で地域と助け合いながら生活してきた歴史が沖縄にはあります。日常生活において沖縄の特徴とはなんでしょうか?それは神や祖先との距離感だと思います。そのような特異性が柳田國男以来、数多くの民俗学者や人類学者の興味を引き付けて止まないところでしょう。沖縄の生活の基本となる家族や村落の中心に神があり、祖先があるということは観光地化された現在でも一歩踏み込んで沖縄を観察するとみえてきます。本土の都会に過ごす人々が日常に神や祖先を感じることがあるでしょうか。せいぜい「困った時の神頼み」程度の距離感なのではないかと思いますが、沖縄はちょっと違います。距離感の近さを裏付ける事例に沖縄における芸能の位置付けがあると思います。本来の芸能は神に対しての奉納であり、観客の存在は重要ではありません。沖縄は神と芸能と民衆が一体化しており、極端なことを言えば、祭事には村人全てが芸能者となり「カチャーシ」をしながら参加します。沖縄の人にとって祭事はきわめて身・u梛゜で、神と人、もしくは祖先と子孫のコミュニケーションであるといえるのではないでしょうか。
今回のサイエンス・カフェは美ら島沖縄大使でもある阪井先生が「神の島・沖縄」 への旅の楽しみ方の提案でもあり、商業主義的な祭りが増加する現在において「祭り」の原点を見つめ直す意味も含めて有意義でした。

唐木健仁(愛知県立大学大学院修士課程2年)