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服部幸造教授「戦国時代武将の文化活動-『月庵酔醒記』をとおして」

第1回 サイエンスカフェ 2007年6月17日(日)

テーマ:「戦国時代武将の文化活動-『月庵酔醒記』をとおして」

講師: 服部幸造教授

サイエンスカフェ

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記念すべき第一回目は服部幸造先生の「戦国時代武将の文化活動」がテーマでした。今川了俊、太田道灌ら私も名前ぐらいは知っている武将たちが「文化人」としてはどんなことをしていたか、というような紹介があったのち、三河の国に出自の由来を持つ一式直朝(月庵)~のちに、幸手(さって:現在の埼玉県内)城主~というサムライが著した『月庵酔醒記』の話しに入りました。

この本は、一般の人間はもちろん、中世文学の研究者でもほとんど知られていない、読まれていない、読むのも難しく読んでもよくわからない、というないないづくしの書のようです。それをこのほど服部先生が注釈本として出版しました。もとはさほど長くないけれども、注釈にスペースを要して3巻本となる予定で、この4月にその上巻が出たばかりだそうです。誰もしてこなかった仕事だということで、6500円にもかかわらず割とよく売れているとのこと。

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この書物は月庵さんが読んだり聞いたりしたというネタの、聞き書き抜き書きがほとんどで、著者のオリジナルなものなどほとんどない!、しかもくだらない内容ばかりだ!と服部先生はこっぴどくこきおろしながらも、当時(16世紀前半から末葉)の文化万般、すなわち芸能、俳諧などにはじまり、医術、武術や巷間説話などまで、ありとあらゆるジャンルについて網羅されているという意味では、文化の担い手だった公家・貴族たちの生活、風俗、遊びなどが活写されていること、そしてどちらかというとやんごとなき人々の文化の権威性が引き剥がされつつ、上から下へ、京から東国へと文化が伝えられていると解釈できそうだと解説されました。(いささか私流理解も混じっているかもしれませんので、ご注意を。)
服部先生の軽妙洒脱な語り口にもかかわらず、はじめのうちはやや硬い雰囲気もありましたが、一つふたつ質問がでるに及び、急速にサロンムードが高まり、質問や感想・意見が飛び交って、服部先生も適宜とぼけて下さるので、たいへんなごやかな空気につつまれるようになりました。

参加者は、19名。講師を含めて募集数の20名ジャストでちょっと少ないかなとも思われますが、規模的にはちょうどよい感じでした。それでも声が届きにくいという意見もあり、次回からは店側にマイクアンプを用意してもらえそうです。

有賀克明(同研究科教授)