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小林かおり教授シリーズ「欧米」を考える(2)「『じゃじゃ馬たち』の文化史 ~シェイクスピア上演と女の歴史~」

Posted By human On 2015年6月30日 @ 07:02 In サイエンスカフェ | Comments Disabled

第71回 Human & Social サイエンスカフェ

日時 2015年6月20日(土) 15:00 - 17:00

内容 講義名:シリーズ「欧米」を考える(2)
「『じゃじゃ馬たち』の文化史 ~シェイクスピア上演と女の歴史~」

講師名:小林かおり教授(イギリス文学)

今回のテーマ作品であるシェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』は、一般的には馴染みが薄く、『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』のように有名な作品ではない。しかし、あえてこの作品の話題性を考慮して私達に紹介いただいた小林かおり先生の意気込みが、概要説明文だけでなく映像など多彩な手段で教授されたことから感じられた。

『じゃじゃ馬ならし』は1592年から1594年に書かれ、シェイクスピアの初期の作品である。時代考証を日本と比較すると1600年の関ヶ原合戦の数年前に完成したことになる。原作の題名は、The Taming of the Shrewで、辞書によると、tameは飼いならす、服従させる、という意味であり、shrewはがみがみ女、口やかましい女、じゃじゃ馬と訳されている。題名のみから推察するとやや陰湿なイメージであるが、内容は茶番的な場面が含まれており、『じゃじゃ馬ならし』(シェイクスピア著、福田恆存訳、平成25年、新潮社)が、シェイクスピアには珍しく悲劇的な要素をほとんど含まれない喜劇の一つであると解説しているように、シェイクスピアにとってはめずらしく女性が主人公になっている。

小林先生の著書『じゃじゃ馬たちの文化史』(2007年、南雲堂)では、『じゃじゃ馬ならし』が問題劇であるのは、テクストに描かれた二人の関係を一枚岩にとらえるのが難しいためであると、述べられている。なお、最後の見せ場では、カタリーナが夫・ペトルーキオに従順になっていく様子が描かれているが、従順とは名ばかりで、男女のずるさが背景にあるように思われる。

講義の冒頭、「芝居は自然を映し出す鏡で、それぞれの時代・場所の社会的・文化的コンテクスト(背景)のなかで生きる私たちの姿」と紹介があり、さらに講義中の質疑応答では、この作品の妻の従順なふるまいが話題となり、受講者の男女間では異なった感想が寄せられるなど、ジェンダー観、結婚観などの観点から現代でも重い課題を投げかけている文学作品である。しかし皮肉にもこの六月に文部科学省が国立大学の人文社会科学系の学部には廃止を含む見直しを迫っているという新聞報道があったばかりのタイミングで今回人文社会科学の講座を受講できたことは改めて人文社会科学の研究の重要性を再認識でき、有意義な時間を過ごすことができた。

纐纈俊夫(同研究科前期課程)

サイエンスカフェ


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