市川哲准教授「特産物取引に見る民族関係と自然環境利用の変化:近年のマレーシアにおけるツバメの巣ビジネスの特徴」

マンデーサロン

特産物取引に見る民族関係と自然環境利用の変化:近年のマレーシアにおけるツバメの巣ビジネスの特徴

2015年5月25日(月) 午後4時30分~6時

講師 市川哲准教授 (観光学・東南アジア地域研究)

古くから中国で高級食材として珍重されている「ツバメの巣」は、中国内部だけで完結するものではないそうです。主に採集はマレーシアやインドネシアなど東南アジアで行われ、取引は香港で、消費は中国本土で、という大規模なビジネスがあるのだと知りました。同じく中国文化圏で高級品として扱われているナマコよりも、供給量が多いため今後のビジネスチャンスは大きいと考えられています。その位置づけは日本でいうメロンに似ているそうです。

特にフォーカスされたのが、ツバメの巣採集地であるマレーシアのサラワクという地域でした。伝統的な採集方法として、サラワクの先住民によって洞窟でアナツバメを引き寄せ営巣させるものがあり、もう1つの方法に、ファームハウスを建てCDやDVDの音声を使ってアナツバメを引き寄せるものがあり、言わば「天然」と「養殖」という分類ですが、味は変わらないそうです。

報告後、近年の習近平主席による倹約令の影響を受けたのかどうかという質問がありましたが、あまり受けていないというのが意外でした。また、ツバメの巣にはヒアルロン酸が豊富に含まれていると聞いて、その美容効果が気になりました。まだまだ神秘がありそうで今後の研究成果を聞けるのが楽しみです。

林聖子 (同学部卒業生)
マンデーサロン

山本明代教授シリーズ「欧米」を考える(1)「多文化の帝国オーストリア=ハンガリーと移民のアメリカ」

第70回 Human & Social サイエンスカフェ

日時 2015年4月18日(土) 15:00 - 17:00

内容 講義名:シリーズ「欧米」を考える(1)
「多文化の帝国オーストリア=ハンガリーと移民のアメリカ」

講師名:山本明代教授(東欧とアメリカの近現代史)

穏やかな天気の土曜日の午後、予想よりも多く、約50人の方々が出席した「多文化の帝国オーストリア=ハンガリーと移民のアメリカ」と題されたサイエンスカフェに参加した。

1920~30年代のハンガリーからアメリカ・シカゴへの移民とシカゴ万博をめぐる問題であった。これまで自分が全然知らない分野であったものの、講師の山本先生からは、史実としての歴史だけではなく、民族や文化などについてわかりやすい説明を聞くことができ、とても楽しかった。アメリカは移民でできた国であることは漠然とはわかっていても個別の国名や移民してきた人々について具体的に考えることはこれまでなかったし、ハンガリーについても、アジア系民族であることなど断片的に高校時代の世界史の知識があっただけでそれ以上のことはなにも知らないということを改めて気づかせてもらう良い機会になった。自分は学生時代に、世界史がとても好きな科目であったことを改めて思いだすことができ、今回をきっかけに歴史への興味が高まって、さっそく図書館に足を運び一般の歴史書ではなく、少し専門的なヨーロッパや民族に関することなど、これまでに読んだことがないテーマの本を何冊か本を借りて読んでみても、とても楽しむことができた。学生時代とは違う「学ぶ楽しみ」を感じることができ、また新しい世界に目を向けて勉強がしたくなった。

辻村享嗣(会社員)

サイエンスカフェ

人間文化研究所共同研究プロジェクト成果報告会 2

マンデーサロン 2015年3月23日(月)

人間文化研究所共同研究プロジェクト成果報告会 2

第1部「成人期への移行と年齢規範意識 —
『製造業中心地域における成人期への移行と経済変動』を考えるために」

第2部「ESDのフロンティア-人文社会学部における実践にむけて」

何気に訪れた大学ウェブサイト内でマンデーサロンのことを知り、そこにあった安藤究氏の研究発表に「成人期」と「移行」なる文字を発見。勝手に「近代化過程と通過儀礼とかかな~?」と思いこみ、ふらりと滝子へと足を延ばしてみたのですが。

放大で心理臨床を学ぶ身の上、発達やライフサイクルにはなじみがあるものの、なぜかキャリアが関わるとなると、実はからきし苦手な私でした。しかも習いたての統計学知識もまったく及ばない数値の解釈があって、45分の発表とはいえなかなかの手ごわさ。しかし、ライフイベントの中からある規範意識を設定し、その意識調査をもってひとつのライフサイクル段階への到達感を見るという考え方に、近代化で廃れつつある通過儀礼的な要素を感じ取りました。おそらく心理学とも人類学とも似て非なる領域かと思いますが、大げさに言えば、これまで数値化困難と思われがちな通過儀礼的要素への、新たな研究手法を示された気もしてきます。

普段放大で発達などを学んでいると、当たり前のように受け止めているライフサイクルですが、かような設定要素を抽出できるかと思うと、はっとさせられました。研究手法としても、大きな参考になりました。

石黒隆利 放送大学全科生 心理と教育専攻
(愛知学習センター所属)

マンデーサロン

成田徹男教授「「老人語」の話―言語の世代差のとらえ方」

第69回サイエンスカフェ 2015年2月14日(土)

講師 : 成田徹男教授

テーマ : 「老人語」の話―言語の世代差のとらえ方

日本語研究の豊かさと楽しさに改めて気づかされた有意義な講座であった。「老人語」は、言語研究のカテゴリーである「役割語」のひとつとしてとらえられる。しかし、「老人語」には多くの意味やとらえ方がある。現在、役割語といわれている「老人語」は語り口以外にはあまり特徴がなく、語彙の面で貧弱だという。成田教授は、「老人語」を広い概念でとらえ、現実の世代差としての「老人語」という面からだけではなく、話し手の頭の中にある役割語から考える「老人語」について話をされた。この点に本講座の大きな特徴がある。

「老人語」に関しては、遠藤織枝(1990)の老人語の特徴研究や金水敏(2003ほか)による役割語研究があるが、本講座では、日本語学研究の成田教授ならではの「じいじ語・ばあば語コスプレ」の提唱がなされた。言語というのは、伝達手段であると同時に、話し手の自己意識、自分らしさを形成するものである。自分が自分らしいことばや言い回しを使わなければ、いずれは滅びてしまう。それは自分が自分でなくなってしまうことを意味する。残すためには自分で使い続けるしかない。もっと自分たちの世代のことばを使おうということだ。

特に印象に残ったのは、いつかは変化を余儀なくされる言語であっても、自分が自分でいるために「変化にあらがう」ことの意義を示唆された点であった。

山田陽子(本学非常勤講師)

20150214narita

人間文化研究所共同研究プロジェクト成果報告会

マンデーサロン 2015年1月26日(月)

人間文化研究所共同研究プロジェクト成果報告会

第1部「ポストエスニック時代の文学におけるオムニフォンの意義」

第2部「名古屋の観光を歴史・文化・まちづくりから考える」

今回は土屋勝彦氏と溝口正人氏の報告があり、土屋氏はシンポジウム「日本文学における越境の諸相」、溝口氏は歴史的町並の保存方法をテーマに報告された。
近世日本では西欧文学を輸入し、それを翻訳する作業が盛んに行われたが、日本文学は翻訳をした者の文学も構成要素の一つとなっている。すると、翻訳者たちの文学には、自然とヨーロッパ的表現が入っていることになるだろう。このように考えると、日本文学と言いながら、最初からその中にヨーロッパ的要素が含まれていることになり、本当の日本文学とは何か、本当の「越境」とは何か、さらには「日本的」とは何かと言う疑問が出てくる。土屋氏の報告はこのようなことを考える良いきっかけとなった。

日本には多くの歴史的建築物があるが、これらをどう保存していくか。溝口氏は歴史的町並の保存には①住めること②清潔さ③見える価値の三つが必要と言われた。この中で①住めること、という点は盲点であったが、とても納得した。そのため外観を残し、中は快適に住めるようにリフォームしているものもあるらしい。しかし、建築物によっては中の構造自体に価値があるものもあるはずである。このような建築物に対してどう対応して保存するのか考える必要があると感じた。
今回は土屋・溝口両氏による報告であって、それぞれの報告テーマは直接関係するものではなかったが、両氏の報告とも新たに考えるきっかけを与えてくれた有意義なものであった。

手嶋大侑(本学研究科博士前期課程)

マンデーサロン

Page 2 of 28123451020...Last »