印刷 印刷

伊藤恭彦教授「税制改革の政治学-公平な社会のための税を考える-」

37回サイエンスカフェ 2010年7月18日(日)

テーマ:「税制改革の政治学-公平な社会のための税を考える-」

講 師: 伊藤 恭彦教授

サイエンスカフェ7月11日に行われた参議院選挙では、消費税が大きな争点となりました。IMFからの勧告や、事業仕分けなども含め、今日、「税」が大きな課題となっているなか、まさにその「税」をテーマにサイエンスカフェが開かれました。

伊藤先生は、「税」を経済学の視点からだけでなく、政治哲学の観点から捉え、税が奉仕する正当な「社会目標」が必要であると指摘されました。私たち国民が、どのような社会を実現したいかという共通の目標を設定し、その実現の手段として税制を捉えるという考え方は、非常に民主主義的で、また理にかなった考えであると感じました。 人それぞれ多様な経済生活の中で、いったい公正な税とは何かと考えるとき、この社会目標を指標にすれば、おのずとその方向性が見えてくるかと思います。たばこ税などわかりやすい例も挙げられました。 また、社会保障など、いわば自分以外の他者に分配される税の不公平感の反論として、個人が労働できるのは、他者の労働によって支えられているのだという見解は、非常に説得力がありました。

リバタリアニズム(自由至上主義)の主張も一見正しいように思えますが、誰もが社会システムの一員として存在していることを考えると、その矛盾は明らかで、改めて他者と自己との関係を認識するとともに、税制の必然を考えさせられました。 税について、そして社会目標について積極的に議論していくことは、税を負担する私たちの権利であり、また義務でもあると感じます。名古屋市では、河村市長の政策により、市民の意志を行政に伝える場が設けられています。そのような、市民が「社会目標」をつくっていく場が今後普及するとともに、より活性化していくことを願います。

野川恵生(同学部生)