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菅原真准教授「ホームレスと『住所』・『居住』権」 

第24回 サイエンスカフェ 2009年5月17日(日)

テーマ: 「ホームレスと『住所』・『居住』権」

講 師: 菅原真准教授

今月のサイエンスカフェは、「ホームレスと<住居>・<居住>権」と題し、菅原真准教授の講演が行われました。当日は雨が降る悪天候でしたが、10名の方に参加いただき、終始アットホームな雰囲気でした。

講演冒頭、派遣切りやワーキングプアに見る、近時の若者の労働環境問題に触れ、“「絶望」する若者たちに人文社会科学は「希望」を語ることはできるのか?”という問題意識を持ち、路上生活者又はホームレス状態にある人の「人」権・「市民」権である、「住所」や「居住」をめぐる憲法学的考察をするに至った経緯が説明されました。

次に、実際の訴訟内容とその判決を追いながら、法律上及び行政上、ホームレスの「住所」・「居住」はどう考えられてきたか、民法上・公法上の「住所」観念はどのようなものか説明がなされた後、「住所」がないことで社会的に不利益になることの具体例を挙げ、「住所」・「居住」権を考察しました。また、ホームレスが居住している場所は、公園等の公の場所であることから、ホームレスの自立支援法と都市公園法の規定の矛盾を見ながら、ホームレスの「住所」・「居住」権と公の空間占有権限の問題についても考察しました。サイエンスカフェ

講演終了後は、質疑応答及び講師・参加者を交えての意見交換を行いましたが、身近な話題であり、実体験を踏まえた活発な発言がなされました。

昨今の雇用制度や経済状況の変化から、ホームレス自体の実態も従前とは異なってきており、その「住居」・「居住」権を考える重要性は増してきていると強く感じるカフェでした。

廣瀬直子 (同研究科博士前期課程)