Archive for the ‘講演会・シンポジウム’ Category

「COP10 と環境まちづくり」シンポジウム

「COP10 と環境まちづくり」シンポジウム

標記シンポジウムが2009年12月19日午後、人文社会学部棟1 階会議室で行われた。COP10が来年10月に愛知・名古屋で開催されるのを前に、人間文化研究所としても関連企画を準備してきた。

最初のセッションで「都市の緑を守る意義」と題 して、名古屋大学生命農学研究科の宗宮弘明教授が 報告した。地球の歴史や魚類との関係からヒトのな りたち、生態系や生物多様性をわかりやすく説明し、 都市と生物多様性との関係について、名古屋平針の里山などを例に問題を鋭く提起した。 「自然はあたりまえにあるのではなく、まもらなければならない」という生物学者の言 葉を引用して、持続可能な社会を作るには環境教育 が不可欠だと述べる。 宗宮教授は市民グループ「平針の里山保全連絡協 議会」代表であり、報告は具体的で説得力に富むも のであった。残念ながら、シンポジウムの3日後、 河村名古屋市長は平針里山の開発許可を認めた。 COP10を控え、平針をはじめとした里山の行方を注視していきたい。

「暮らしの中の生物多様性」をテーマにした次のセッションでは、城西大学の石井雅 章講師が大学で実践している「耕作放棄地活用プロジェクト」を紹介した。続いて鎌倉 を中心に「サークルてのひら島」などで活動している廣田修氏が、「環境保育とこども の遊び場」と題して豊富な資料により報告した。

報告の後、参加者との質疑も活発に行 われ、じつに興味深いシンポジウムとなった。初雪の寒さも影響したのか、期待したほ ど参加者が少なかったのが残念であった。

山田 明 (同研究所長)

2009年人間文化研究所5周年記念シンポジウム

2009年人間文化研究所5周年記念シンポジウム

11月28日14時から人文社会学部棟201教室にて標記シンポジウムが開催された。博士後期課程の山田陽子さんが司会をつとめ、まずは吉田一彦研究科長が挨拶をした。ついで長野県下伊那郡泰阜村の松島貞治村長が「安心の村は自律のむら」と題して記念講演を行った。

泰阜村は人口1949人の高齢化率37.6%の小さな村であるが、65歳以上の人口は減少しつつあり、高齢化は乗り切った。泰阜村は在宅福祉の村として全国的に有名である。人間にとって「老い」「死」は避けることのできない現実である。高齢者の願いは「住み慣れた家で最 期を迎えたい」であり、そのために医療より福祉、在宅福祉に力を入れてきた。役場は山村社会の「拠り所」であり、合併を選択せず自律のむらを目指してきた。泰阜村は戦前、満州開拓に1200名の村民を送り出し、638名もの人が犠牲となった。国策にのらず、自分の足で歩む以外ないというのが結論だ。松島村長の講演はじつに示唆に富むものであり、テープを起こして詳細に紹介していきたい。

休憩をはさんで、「持続可能な社会」をテーマにパネルディスカッションを行った。パネラーは松島村長のほか、本研究科から成玖美准教授、村井忠政名誉教授、福吉勝男名誉教授、コーディネーターを私がつとめた。両名誉教授は、人間文化研究所の初代と2代目の所長である。3代目を私がつとめている。まず記念講演に対する感想・質問を手短に述べてもらい、会場からの質問を含め、村長にじっくり回答してもらった。記念講演とともに、延べ60名の参加者から好評のようであった。母の死の直後で疲れ果てていたが、無事にシンポジウムを終えられ嬉しいかぎりだ。

山田 明 (同研究所長)

Anna Pegler-Gordon先生「写真から見るアメリカ合衆国の移民政策1875-1930年」

講演会 2009年6月13日(土)

テーマ:「写真から見るアメリカ合衆国の移民政策1875-1930年」

講 師: Anna Pegler-Gordon先生 (ミシガン州立大学ジェームズ・マディソン校)

、ミシガン州立大学(ジェームズ・マディソン校)のアンナ・ペグラー・ゴードン先生の講演会6月13日(土)14時より、ミシガン州立大学(ジェームズ・マディソン校)のアンナ・ペグラー・ゴードン先生の講演会が1号館1階会議室において開催された。今回、ペグラー・ゴードン先生は、日本アメリカ学会とアメリカ歴史家協会(OAH)の2009年度短期滞在研究者派遣プログラムによって来日され、本学人間文化研究科が受け入れ先となった。講演会は「写真からみるアメリカ合衆国の移民政策1875-1930年(In Sight of America: Photography and U.S. Immigration Policy, 1875-1930)」と題し、本研究科のアメリカ文化研究会と名古屋アメリカ研究会の主催、人間文化研究所の後援により、研究者だけでなく市民の方々にも理解いただけるように日本語の通訳を交えて行われ、合わせて49名の参加者を迎えた。

講演の内容は、アメリカ合衆国でその年に発表された優れた歴史研究論文を集めたThe Best American History Essays 2008に選ばれた論文を基にし、今年9月に出版される新刊の一部を紹介いただくものだった。気鋭の移民史研究者として注目されるペグラー・ゴードン先生の研究の新しさは、移民史研究の資料と方法に写真を取り入れ、写真による可視化の問題を論じた点である。具体的には、19世紀末アメリカ合衆国において中国系移民が排斥される中、科学的な管理強化に基づき証明写真が導入されたのに対し、一部入国が許可された中国系移民がアメリカの中産階級の規範に適合的な人物像を写真によって造形し抵抗を試みた点を分析することによって、アメリカの移民政策に内包された人種主義と移民の対抗戦略を明らかにした。講演には多くの質問が出され、講演会終了後にはペグラー・ゴードン先生を囲んで懇親会も行われた。

この講演会以外にも、12日(金)午後と13日(土)午前には研究者向けの2つのセミナー、セミナー1 “Nativism and Indigenismo: Mexican Immigrants and Mexican Arts in the United States, 1929-1940”とセミナー2 “Seeing Immigrants through Ellis Island”、15日(月)5限には学部生向けの特別授業 “Mexican Immigration: Past and Present” が開催された。今回の招聘により、多くの研究者だけでなく、本学の大学院生や学部生、市民学びの会を含む市民の方々も最新の移民史研究の成果にふれて、アンナ・ペグラー・ゴードン先生と研究交流を行うことができたのは有意義な機会だったと思われる。

山本明代 (同研究科准教授)

「共生」シンポジウム

「共生」シンポジウム 2004年12月18日

人間文化研究所「共生シンポジウム」
昨年12月18日に人文社会学部棟201教室で「共生」をテーマにした公開シンポジウムを開催した。主催は人間文化研究科であり、夏から準備してきた。こうした研究科主催のシンポジウムは、学部・研究科ができてから初めての企画である。かねてから学部・研究科の「存在」を対外的にアピールする必要を感じていたので、研究科長自らが「旗振り役」になって企画・準備してきた。

本研究科は法人化準備の過程で研究所設立、教職などの免許資格を重点課題と位置づけ、各方面に働きかけてきた。この4月には「人間文化研究所」が設立できることになり、その記念の催しにもすることができた。パネリストは今福龍太氏、平野健一郎氏、水野理恵氏、宮島喬の4氏であり、コーディネーターを村井忠政氏がつとめた。

パネリストの「顔ぶれ」もあり会場がほぼ満席になった。事前に参加者数が把握できなかったので、ほっとしたものである。シンポジウムでは「共生」研究の課題と展望をテーマにして、4時間半近くの報告と討論がなされ、密度の濃いシンポジウムになったと思う。この内容は報告書として刊行される予定だ。これから研究所を中心にして、「共生」「多文化共生」ないし「共生社会」研究を推進していきたい。

シンポジウムが終わってから「懇親会」を行った。これも「生協」食堂でやったこともあり「盛況」であった。

山田 明(同研究科教授)