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安藤 究 准教授「『祖父母という経験』を考える」

50回サイエンスカフェ 2012年5月27日(日)

講師:安藤 究 准教授

テーマ:「『祖父母という経験』を考える」

「こういうの大好き!」と笑顔の、5人の孫がいるという女性と席に着いた。多くは祖父母世代で、若い人も混じり、ほぼカフェの席が埋まるほどの 参加者であった。

サイエンスカフェ

ケーキとお茶付のおしゃれな雰囲気の中で、戦後日本の人口変動と家族変動という社会の変化が、「祖父母」にどのような変化を及ぼしているかについてデータが示され、サイエンスカフェがはじまった。現在の祖父母は、戦後の著しい平均余命の伸長と出生率の低下から、かつて自分が孫として経験した「祖父母-孫」関係とは大きく異なる「祖父母という経験」をしている。かつては相対的に多くの孫と短い期間の経験であったものが、現在では相対的に少ない孫と長い期間を祖父母として過ごすことになるというものである。

また、戦後日本の家族変動が、「祖父母という経験」に与える影響についても検討された。戦後の日本の家族は専業主婦化で示される近代家族の普及と、その揺らぎの時代の2つの段階を経てきたというこれまでの知見が紹介され、現在の祖父母は、成人期に近代家族と親和的なジェンダー化されたライフコースを歩んできたことが、祖父性と祖母性に反映されていると指摘された。祖母は加齢によって「祖母であること」の重要性に変化は見られない が、祖父は就業状況の変化などから、加齢とともに孫への関心が増大する傾向が認められる。今後は、政策的に祖母力の活用のみでなく、祖父力に注目することが必要であると提言された。どのようにすれば祖父母が孫の発達に影響を与えることができるのかなど、今後の祖父母研究の成果にも期待が持たれる。

「おじいさん」「あばあさん」という呼称についてなど、経験をとおした質問に活発な意見も相次ぎ、アカデミックな雰囲気のカフェを満喫した。

田中 和子(大学院修了生)