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三浦哲司准教授「姉妹友好都市トリノ―都市再生のあゆみと地区自治の展開」

マンデーサロン 2014年5月26日(月)

講師:三浦 哲司 准教授(地方自治論)

テーマ:「姉妹友好都市トリノ―都市再生のあゆみと地区自治の展開」

現代社会学科のホープ、新任・三浦先生のご報告は、楽しいながらも、深い射程をもっていた。イタリアの地方自治制度を踏まえながら、自動車産業の企業城下町から観光都市へと変貌していったトリノの展開を簡潔に描いて見せた。都市計画家市長による都市再生戦略は、産学官連携、新しい都市計画や住区再生を行い、トリノオリンピックを梃子に、見事に「都市再生」を果したという。

むろん、何をもって「都市再生」とするかという問題はついて回る。「都市再生」は、しばしば地区の貧者を排斥し、富裕化(ジェントリフィケーション)をはかる危険性をはらんでいる。イタリアブランドを掲げて突っ走った「観光都市」トリノは、産業技術・人材の断絶という問題を孕んでいるのではないか。それは、日本の企業城下町「再生」のモデルとなるのかと、フロアからも疑問が呈された。

すぐさま日本の都市とトリノを比較するのは拙速かもしれない。しかし、三浦先生の故郷・夕張のように、日本において脱工業化しようとする(せざるを得ない)企業城下町の観光都市戦略は、なぜ斜陽に向かうのか。第二次東京オリンピックを控え、スカイツリー開発に「成功」した東京城東の「都市再生」は、いかなる展開を遂げるのか。観光戦略を、地方自治制度・地区自治と組あわせながら考察する三浦先生のご研究は、大変意義深く、考えされられるものだった。

林 浩一郎(本学 人文社会学部 現代社会学科 専任講師)

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