Archive for 3月, 2010

阪井芳貴教授「ウチナーVSヤマト」

第33回 サイエンスカフェ 2010年3月21日(日)

テーマ:「ウチナーVSヤマト」

講 師: 阪井芳貴教授

サイエンスカフェ

現在、連日沖縄報道がなされている。もちろん普天間基地移設問題だ。政治や「沖縄」について知識のない者でもテレビや新聞から基地のゆくえが気にならざるを得ない状況の今日、沖縄県美ら島沖縄大使でもある阪井芳貴教授から「ウチナーVSヤマト」の題目で講義が行われた。

まず、日本においてトップであるかワーストであるかというポジションにある沖縄の説明がされた。平成18年から20年における主要指標調査の概説で沖縄の外郭が理解できたところで、次に沖縄の歴史に移った。この歴史説明は単なる沖縄の時の推移ではなく、ウチナーからみた日本、ヤマトからみた沖縄の視点からの歴史が語られ、外からくるものを受け入れながらも自分のものに変容して受け入れて来た歴史に沖縄のあたりのよいやさしさの奥にある、したたかさ、強さを感じた。歴史を語りながら「集団自決」をめぐる教科書検定問題、米軍基地の過重負担、江戸時代に18回も行われた江戸上り、それにより琉球側と幕府側の異文化体験といった政治、経済、文化にまで多岐にわたる内容であった。

また、4月25日に沖縄県民大会が開催されることにも言及された。沖縄の人たちは県外、国外移設を求めている。しかし、政府はシュワブ陸上部とホワイトビーチ沖の2案を提示方針とし、首相は沖縄県外移設の断念を示唆したされている現在、私たちはどうしたらよいのか考えさせられる。3月下旬春分の日であったが、午前は黄砂に覆われ、午後は強い風が吹いた寒い天候のなか、19名の方が参加された。終了後、帰路、栄の繁華街を歩きながら、まわりの若者にとって沖縄はどんな存在なのだろうか、今後基地問題はどのような結果に至るのか思い巡らされる講演内容であった。

水野 美津子(同研究科博士前期課程)

梶田美香さん「地域におきる芸術教育の可能性―小学校からの実践報告」

マンデーサロン 2010年3月15日(月)

テーマ: 「地域におきる芸術教育の可能性―小学校からの実践報告」

講 師: 梶田美香さん(同研究科博士後期課程)

本学大学院博士後期課程の梶田美香さんを講師に開催された。前半は、梶田さんが小学校で実践しているプログラムに沿って進められた。初めのグランドピアノの生演奏を聴きながら、音楽教室というこじんまりした空間であったせいか、「音」は物体の振動が空気の振動として伝わることを改めて実感していた。iPodやケータイで音楽を聴くのでは味わえないであろう、空気の振動を皮膚で感じるような一次的経験が子どもの発達過程において重要である、という講師のメッセージが込められているようにも感じた。

続くヤマハミュージック東海の佐橋さんの「チェンバロは叩くのではなく引搔いて音を出す」「グランドピアノはレペティションレバー機構によって鍵盤が素早く戻る」などのピアノの仕組みに関する話も、とても興味深いものであった。さらに、演奏された曲のイメージから題名をつけてみたり、グランドピアノの周りでハンマーが弦をたたく様を目の前で見たり、受動的のみにならないよう工夫されていたが、子どもたちとは異なり、目の輝きや反応がやや鈍っている聴衆を前にお二方ともやりにくかったのではないかと思う。

後半はパワーポイントによる報告で、音楽など芸術の専門家が、外に出かけて行って芸術普及活動を行う「アウトリーチ」について説明がなされた。梶田さんは、このアウトリーチを小学校で実施するにあたり、「総合的学習」における一過性的な活動にとどめるのではなく、音楽科教育の中に位置づけようと、意欲的に取り組まれている。特に「鑑賞」だけではなく「創作」すなわち曲作りまで行うことで、子どもたちの音楽に対する意識が大きく変化したであろうことが推察できる。おそらく今後は実践による効果をどのように客観性をもって評価するか、について検討されていくことと思い、研究の発展に期待している。

野中 壽子(同研究科教授)