Archive for 12月, 2012

エリック・ロフグレン氏「現在の留学のあり方~これでいいのか~」

マンデーサロン 2012年12月17日(月)

講師: エリック・ロフグレン氏
(バックネル大学教授、Associated Kyoto Program, Resident Director)

テーマ:「現在の留学のあり方~これでいいのか~」

まず、最初に誰もが驚いたことはロフグレン氏のあまりにも流ちょうな日本語であろう。なぜ、それほど日本語がうまくなったのかという疑問を持ちながらお話を聞いていくと、彼の日本での留学生活が要因であることがわかった。マンデーサロン

ロフグレン氏は「留学とは何か」という問いの答えは、期間や年齢にかかわらず、異文化の中に入り込んで、勇気を出して失敗をおそれないで、異文化社会の人々と接することで、十分にコミュニケーションができない「不安感」を乗り越えようと努力する体験が留学であると語った。このような30年前の彼の留学体験によって、彼は日本文化を「学んだ」以上に「身につけた」。

次に「現代の留学の問題は何か」に対しては、若者が留学先で感じる「不安感」を自分一人で乗り越えようとしないことであると言う。現代の留学生はどこに行ってもインターネットの母国語に逃げることができるので、言葉が通じない「不安感」を乗り越えようとする苦しい体験をしようとしないからである。今後は、留学による直接体験がインターネットの魅力より大きいこと、そして、インターネットのつながりよりおもしろいと思わせる留学の何かがあることを知らせることが必要であると提言された。

今回、私は根本的な「留学とは何か」ということについて考える必要性を知った。そして、留学は年齢も期間も関係なく誰でもその文化に飛び込む勇気と、文化を身につけたいと思う意欲があることが重要であると知って、若者だけでなく、熟年者も留学できるのだ!と「期待感」を持てたことはうれしいことだった。

マンデーサロン

伊藤 泰子(同研究科研究員)

ブライアン・リーさん「香港の教育―輔導(ガイダンス・カウンセリング)の発展の過程」

マンデーサロン 2012年11月5日(月)

講師: ブライアン・リーさん(香港特別行政区政府教育局訓導和輔導組督導)

テーマ:「香港の教育―輔導(ガイダンス・カウンセリング)の発展の過程」

マンデーサロン私が香港オタクになったきっかけは、高校不登校の引きこもり中に偶然見た一本の香港映画である。その後、香港の大衆文化研究で修士号を取得し、香港中文大学に留学。映画誌への執筆、カルチャーセンター講師もつとめた。今や香港人の身内がいることもあり、「香港」の二文字に相変わらず敏感である。ちょうど、今回のテーマの関連文献といえる『公教育と子どもの生活をつなぐ香港・台湾の教育改革』(山田美香著、風媒社)を拝読中だったこともあり、家族全員で出席させていただいた。

我ら港日家族にとって香港の教育現場の問題はどれも当事者となりうる問題で、特にいじめ問題は興味深い。寝屋川市中学生いじめを題材にした演劇が教材として用いられているとのことだったが、香港では日本と異なり、クラスで集団的に1人をいじめるといったことは起こり得ないと聞いている。力の強い子どもが弱い子を個人的にいじめ、傍観者はあくまでも傍観に徹するという香港型いじめの具体的事例もドラマ映像などで拝見してみたかった。

個人的に関心を持ち、正に情報収集中である「香港の義務教育の場における広汎性発達障碍児への支援」についても、質疑応答で通訳の山田先生に助けていただき、李先生から丁寧な解説をいただいたうえ、教育現場でいじめ防止をアピールする缶バッジまでお土産にいただき、とてもよい記念になった。

井藤知美(フリーライター)
マンデーサロン