Archive for 12月, 2011

丹羽孝特任教授「日本型父母教育論を構想する―子育て支援研究の発展方向を模索して―」

46回サイエンスカフェ 2011年12月18日(日)

テーマ:  「日本型父母教育論を構想する―子育て支援研究の発展方向を模索して―」

講 師: 丹羽孝特任教授

サイエンスカフェ「父母教育論」という聞き慣れない言葉に惹かれ参加した。

丹羽先生は現在、研究活動のひとつとして、韓国の保育者養成課程で必須科目となっている「父母教育論」の「日本型」を構想されており、今回は、その序説として、日本で父母向けに出版されている様々な雑誌や一般書の分析から、日本の「父母教育」の現状を講義された。

日本の父母向けの出版物は「賢い子を育てる」ための「テクニック論」や「早期教育論」が多く、それらに対する研究者による評価が不十分であるとの分析であった。

今回の講義を聞き、保育所や幼稚園が「親が親になる」ための役割をよりよいものにし、親と子の相互理解をよりよいものにするために「日本型父母教育論」を確立が必要であるということを、私自身「子育て支援」を研究するものとして、また、子どもを保育所に預ける親として、強く認識することができた。

膨大な資料・文献を集め、韓国の「父母教育論」の教科書を3冊も翻訳して下さった丹羽先生に感謝致します。

下方 丈司(同研究科博士前期課程院生)

「東日本大震災から学ぶ 被災地を訪ねて 写真&トーク」

マンデーサロン 2011年11月21日(月), 12月12日(月)

テーマ:「東日本大震災から学ぶ 被災地を訪ねて 写真&トーク」

講 師: 本学ボランティア学生・院生・修了生ほか

11月21日と12月12日の両日、東日本大震災をテーマに恒例のマンデーサロンを開催した。2011年3月11日に東日本を襲った大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。大震災から8か月ないし9か月を経過した時期に、被災地を訪ねた人に現地報告をしてもらう、「東日本大震災から学ぶ」という企画である。当初は報告者が集まるか不安であったが、2日間で8人の報告者があり、パートⅡでは報告時間が足りないほどで、サロンも院生・学生をはじめ多くの参加者があり盛況であった。マンデーサロン

8人の報告を詳しく紹介することはできないので、とくに印象に残ったことを記す。報告者の大半はボランティアに参加して活動してきた学生・院生・修了生などである。報告された主な被災地は岩手県の大槌町・陸前高田市・宮古市、宮城県の石巻市・山元町である。報告はいずれも生々しい写真により、被災地の厳しい現実や現地での活動を紹介するものであった。企業ボランティアに参加した学部3年生は、被災地を「実際に自分の目で見たい」とボランティアに申し込んだ。主催者が活動に「満足しましたか」と述べたことに疑問を感じた。ボランティアは自己満足のために行うのではないと、ボランティアのあり方に問題を投げかける。それとボランティア仲間をつうじて「何かしたい」という人の思いの強さを実感したという。

ボランティア活動の多くは、がれきの処理や側溝の清掃など「力仕事」だが、大学院を修了したNPO職員は被災者の話を聞く活動に参加した。話し相手になることにより、被災者に寄り添うことの大切さを強調し、「ともかく来てほしい」という現地の声を伝える。このほか、福島原発周辺の現実を写真でリアルに紹介した報告、ゼミや寺院でのボランティア報告なども印象に残った。

全国社会福祉協議会(全社協)のまとめによると、大震災から約10か月で震災ボランティアは、ピーク時の10分の1まで減少している(朝日新聞2012年1月13日付)。全社協は「がれき撤去や泥出しなど人数を要する作業が減ったため」とみている。ボランティアだけでなく、東北の被災地を訪ねることも大切だ。宮城復興支援センター事務局長の船田究さんも読売新聞2012年1月5日付で次のように述べている。そもそも、被災地では力仕事のボランティアの需要は減っている。結果として、外から訪れる人たちが減り、被災地への思いが風化し始めないかが心配だ。「来て」「見て」「買って」「泊まって」もらうのは、風化を防ぎ、復興を後押ししてもらうためでもある。

これからも多くの学生・院生が被災地を訪れ、「東日本大震災から学ぶ」をテーマにした企画を継続していきたい。

山田 明(同研究科教授)