Archive for 9月 26th, 2008

田中敬子教授「アメリカン・ゴシックの伝統」

第16回 サイエンスカフェ 2008年9月21日(日)

テーマ: 「アメリカン・ゴシックの伝統」

講師: 田中敬子教授

サイエンスカフェ

ゴシック小説とはイギリスの中世ゴシック建築の古城などを背景に、恐怖や怪奇を目的とする物語であったが、アメリカンゴシックの特徴はアイデンティティや人種問題が含まれることであると説明された。単なる怪奇小説と思っていたものに、アメリカの奴隷制度や人種差別の内面的問題が隠されていることを知った。

次に、具体的にエドガー・アラン・ポー、ウィルアム・フォークナー、トルーマン・カポーティのゴシック系作家の作品を詳しく解説していただき、恐怖、不気味さの裏に隠されている問題や意味が理解できた。これらの作家たちは、個人的にも文章は難しく内容はおもしろくないという印象があるが、一般的には難しく、読みにくいと思われる作品が多いだろう。しかし、それぞれのストーリーを簡単にわかりやすく話していただき、田中先生の解説には引き込まれてしまった。アメリカン・ゴシック系作家にマーク・トウェインの1冊『まぬけのウィルソン』が含まれていたことは私としては意外なことで興味深く思った。

アメリカンドリームの理想の国、アメリカの人々に冷静な批判的な目を向ける効果がこれらのゴシック系作家の作品にあったと思われる。最後には、だれもが読んでみようという気持ちになって、どんな本を読んだらいいか、お薦めの作品を聞くほど、参加者は文学好きになったのではないだろうか。また、私は文学作品に社会を見ることができることから、現代人が文学作品を読む必要性を感じた。

 伊藤泰子(同研究科後期博士課程)