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寺田元一教授「『百科全書』よ、お前もコピペか?!―フランス『百科全書』の典拠をめぐる新研究―」

マンデーサロン 2011年10月17日(月)

テーマ:「『百科全書』よ、お前もコピペか?!―フランス『百科全書』の典拠をめぐる新研究―」

講 師: 寺田元一教授

まずは寺田先生、二時間にも及ぶ貴重なお話しお疲れさまでございました。 18世紀フランス『百科全書』については、院生だった時期に寺田先生のゼミで学びはしましたが、十分にその全体像・概念がつかめないままでした。18世紀フランスにおける『百科全書』の出版がいかなる意味を持ち、また今日現代においても研究対象として多くの研究者がそれになぜ携わっているのか、『百科全書』自体についてかなり理解する事ができました。

サイエンスカフェ寺田教授特には、マンデーサロンのタイトルにある「お前もコピペか?」にはサロン出席前までは、百科事典のたぐいの書においては、一般に使われている「コピペ」の意味とは全く同一ではないが、専門書ではない故、他の専門テキストや専門家からの知識の引用・導入は当然ではないかと思っておりましたので不思議な感覚でした。

しかしサロン当日資料の中にある、「4・むすびにかえて」で紹介されているディドロ執筆による全書項目「折衷主義」―偏見、伝統、古さ、普遍的合意、権威、つまりひとくちに言って、多くの精神をおさえこんでいるあらゆるものを踏みにじることによって、自分自身で考えることや、もっとも明白な一般原理に立ち帰ってそれを検討し、議論することや、自分の体験と理性の証言のもとづくもの以外は認めないことなどを敢行する―、とか「混合主義」―折衷主義者は誰も味方せず、諸見解をこの上なく厳密な討議に付し、それ自身で明証的な概念に還元できると思われるような命題しか体系から取り入れない―などは私が今取り組んでいる17世紀後半から18世紀の、後に理神論者と称される人々例えばジョン・トーランド、アンソニー・コリンズなどが、ローマカトリック教に反論して唱える反カトリック教理主義との文脈に多くが重なり驚いているのと同時に、両者に共通する人間理性を重視した近代合理主義の立場に立った知識の普及・啓蒙活動に大きな役割を果たしたことを実感できたことです。そして今まで多くの人が携わり現在においても続く『百科全書』研究活動というものが、いかに多くのエネルギーを必要とし、奥深いものかが想像でき感銘いたしました。

寺田先生の典拠の新発見もかかる活動の結果だということが理解できました。最後に『百科全書』の出版は、当時の社会環境、諸書籍保全、印刷技術などを考えると、いかに大偉業であったかが、再確認できたことです。

 服部篤睦(同研究科研究員)