村井忠政名誉教授からの連絡
既存のサークルとは別に、学びの会のメンバーの一部有志によるオンライン研究会(仮称:大衆社会研究会)が立ち上げられ、5月9日(土)の午前10:00から12:00まで、第1回の研究会が開催されました。
ZOOMのホスト役を勤められたのは川瀬会員で、第1回の報告担当は村井でした。参加予定者は7名でしたが、実際に参加されたのは5名でした。
使用テキストは、オルテガ・イ・ガセット著/神吉敬三訳『大衆の反逆』ちくま学芸文庫(1995年初版)です。
第1回例会では、同書の第1部第1章「充満の事実」および第2章「歴史的水準の向上」について議論することになりました、
報告者(村井)が事前に用意したレジュメをあらかじめ参加予定者に添付ファイルで送り届け、それを各自がプリントアウトしたものを参照しながら議論を進めるという形式でした。難解な箇所(特にオルテガの「大衆」の定義は大変分かりづらく、誤解を招く恐れがあります)もいくつかありましたが、何とかまとめました。
本書を今日取り上げる意義について。
本書は1930年にスペインの哲学者オルテガが刊行したもので、100年近くも前に今日の高度大衆社会の危機を予見したことで
欧米先進国で注目され、わが国でも保守派論客として活躍された故西部邁氏がオルテガを紹介されたことで広く知られるところとなったわけです。現在もその後を継ぐ研究者としては、たとえば政治学者の中島岳志(東工大教授)がおられます。
昨年(20019年)2月には、NHK教育テレビの講座「100分de 名著」で「オルテガ 大衆の反逆」が取り上げられ、中島岳志教授が講師を務め4回にわたり放映されました。このテキストの中で中島さんは次のように述べています。「著者のオルテガは、20世紀を生きたスペインの哲学者で思想家ですが、彼は本書の中で、『大衆が社会的中枢に躍り出た時代』にあって民主主義が暴走するという『超民主主義』の状況を強く危惧しています。そして、それと対置する概念として『自由主義=リベラル』を擁護しました。(中略)彼が言う『リベラル』とは、自分と異なる他者と共存しようとする冷静さ、あるいは寛容さといったものです。『大衆』が支配する時代においては、そうした姿勢が失われつつあるのではないかというのが、オルテガの指摘でした」。まさに今日の日本こそオルテガの危惧した「大衆社会」状況になっていると言えるのではないでしょうか。
ご関心のある向きには是非参加していただきたいと思います。