山田 明教授「COP10と名古屋の観光まちづくり」

38回サイエンスカフェ 2010年8月22日(日)

テーマ: 「COP10と名古屋の観光まちづくり」

講 師: 山田 明教授

サイエンス・カフェ山田明教授

開府400年記念イベントが佳境を迎え、COP10の開催が目前に迫った8月。今月のサイエンスカフェでは名古屋市観光戦略研究会の座長でもある山田明先生が「COP10と名古屋の観光まちづくり」をテーマに講演されました。 今回の講義では自然環境や生態系の保護・保全と歴史的・文化的遺産の保護・保全の二つの側面から、名古屋における都市型エコツーリズムの可能性と、観光をきっかけとしたまちづくりについて、ユーモアを交えながら、わかりやすく解説していただきました。エコツーリズムと聞くと自然環境に関する観光をイメージしがちですが、歴史・文化的遺産の保全・保護という視点からの考察は新鮮に感じました。

名古屋には東山の森や藤前干潟、郊外の里山の豊かな生態系、そして名古屋城や有松地区、白壁地区の街並みといったような歴史的・文化的資源といったような都市型エコツーリズムの要素が豊富に存在しているものの、これらが十分に認識、活用されていない現状を指摘されました。また、観光戦略研究会座長として、名古屋市の観光行政への働きかけの成果やご苦労をご報告いただき、明確なビジョンを持って、全市をあげて名古屋の個性と魅力を生かす観光まちづくりを行っていくべきだと結論付けられました。

参加者も熱心に講演に耳を傾け、質疑応答の場面では参加者自らの実体験に基づく一歩踏み込んだ具体的な提案がなされるなど、活発な意見交換が行われました。

都市型エコツーリズムが名古屋における新たな観光スタイルとして定着するためには、まずは私たち市民ひとりひとりが名古屋の魅力や個性について見直し、知る必要があるのではないかと感じました。

近藤康一郎(同学部生)

伊藤恭彦教授「税制改革の政治学-公平な社会のための税を考える-」

37回サイエンスカフェ 2010年7月18日(日)

テーマ:「税制改革の政治学-公平な社会のための税を考える-」

講 師: 伊藤 恭彦教授

サイエンスカフェ7月11日に行われた参議院選挙では、消費税が大きな争点となりました。IMFからの勧告や、事業仕分けなども含め、今日、「税」が大きな課題となっているなか、まさにその「税」をテーマにサイエンスカフェが開かれました。

伊藤先生は、「税」を経済学の視点からだけでなく、政治哲学の観点から捉え、税が奉仕する正当な「社会目標」が必要であると指摘されました。私たち国民が、どのような社会を実現したいかという共通の目標を設定し、その実現の手段として税制を捉えるという考え方は、非常に民主主義的で、また理にかなった考えであると感じました。 人それぞれ多様な経済生活の中で、いったい公正な税とは何かと考えるとき、この社会目標を指標にすれば、おのずとその方向性が見えてくるかと思います。たばこ税などわかりやすい例も挙げられました。 また、社会保障など、いわば自分以外の他者に分配される税の不公平感の反論として、個人が労働できるのは、他者の労働によって支えられているのだという見解は、非常に説得力がありました。

リバタリアニズム(自由至上主義)の主張も一見正しいように思えますが、誰もが社会システムの一員として存在していることを考えると、その矛盾は明らかで、改めて他者と自己との関係を認識するとともに、税制の必然を考えさせられました。 税について、そして社会目標について積極的に議論していくことは、税を負担する私たちの権利であり、また義務でもあると感じます。名古屋市では、河村市長の政策により、市民の意志を行政に伝える場が設けられています。そのような、市民が「社会目標」をつくっていく場が今後普及するとともに、より活性化していくことを願います。

野川恵生(同学部生)

天谷祐子准教授「心理学から見る「私はなぜ私なのか」という問い」

マンデーサロン 2010年6月21日(月)

テーマ:「心理学から見る「私はなぜ私なのか」という問い」

講 師:天谷祐子准教授

本年度二度目のマンデーサロンは、4月から本研究科に着任された天谷先生を講師に「心理学から見る『私はなぜ私なのか』という問い」というテーマで開催され、20人弱の参加がありました。心理学をご専門とされる天谷先生ですが、心理学をほとんど知らない方や初学者にもわかりやすいように説明を加えていただきながら報告をいただきました。

天谷先生には、「私はなぜ私なのか」というある種哲学的な問いは多くの人(とくに子ども)が持ったことのあるもので、発達においてある程度一般的な現象であるという点、そしてこのような問いを持つことが発達の中でどのような意味や役割を果たすかという点に関する展望など非常にボリュームのある報告をしていただきました。 このような哲学的な問いを一人の人間の問いとしてではなく、多くの人の発達における体験として心理学から分析するという報告は、心理学という学問がどのようなものであるか、その一側面が参加者に伝わる報告であったように思います。また、本報告は心理学の中でも主流となるテーマとは異なる側面を持ち合わせており、心理学をある程度学んだ参加者にとっても知的好奇心を刺激されるものであったのではないかと思います。 このテーマは天谷先生がこれまでに、そしてこれからも取り組んでいかれるもので、その「最前線」をお伝えいただきました。質疑応答もその「最前線」をめぐる活発なものとなりました。

太田昌志(同学部生)

中川敦子教授「注意の初期発達:”いたいの、いたいの飛んで行け”の真実」

第36回 サイエンスカフェ 2010年6月20日(日)

テーマ: 「注意の初期発達:”いたいの、いたいの飛んで行け”の真実」

講 師: 中川敦子教授

梅雨らしく、激しい雨が降る中で今回のサイエンスカフェは開催されました。そうした足元が悪い中にも関わらず、予想を上回る方々が講義にいらっしゃいました。

中川先生より、今回の論題である、なぜ「いたいの、いたいの飛んでいけ~」の言葉掛けで子どもの「痛み」が緩和されるのか?を分かりやすく解説してもらえました。普段何気なくおこなっているこうした行為も、「痛みの発信源である対象から、他のもの(対象)へ注意をそらす」と考えることでひとつの学問として捉えることができました。また、子どもの「注意」という機能がどのように発達し、脳のどの部分が関与するのかなど、神経心理学をご専門にされている先生らしく、詳しくも分かりやすく教えてもらえました。サイエンスカフェ

また、注意機能の初期発達を豊富な実験経験を交えてお話してくださり、実験という特殊な状況を想像しにくい聴衆からも活発に質問が上がりました。みなさん、子どもの発達に関して並々ならぬ関心を抱いていらっしゃることが伺え、有意義な時間を過ごされたようでした。終了後は雨も上がり、みなさん満足気な表情で雨上がりの栄へと消えていきました。

木村 由佳(同学部卒業生)

小林 かおり教授「日本のシェイクスピア上演」

マンデーサロン 2010年5月17日

テーマ: 「日本のシェイクスピア上演」

講 師: 小林 かおり教授

5月17日、新年度第2回のマンデーサロンがおこなわれました。小林かおり先生に、着任早々のお忙しい時期にもかかわらず、約70分にわたって、「日本のシェイクスピア上演」というタイトルでお話して頂きました。

日本におけるシェイクスピア上演史の検討という課題は、『ハムレット』の「芝居は自然を映し出す鏡」という言葉に従いながら、シェイクスピアの上演のされ方が、日英の関係性もしくは日本社会の変化を映し出す鏡であるという見地から設定されました。具体的には、日本のシェイクスピア上演の歴史が3つの時期にわけられ、「近代化=西洋化の時代」には西洋の模倣、「日本経済の発展の時代」にはオリエンタリズムの体現と解釈される日本独自の価値観の強調、「ポスト・バブル時代」には西洋の視線からの解放と、アジア諸国との競演や多様な方向性の出現という特徴が指摘されました。

小林先生のお話には画像や映像が多く用いられ、特に現在進行中のシェイクスピアのアジアでの上演のアーカイブ化プロジェクトは、十分なインパクトを聴衆に与えました。またお話しの内容は、参加者のそれぞれの立ち位置にそった多様な関心を惹起する刺激的なもので、質疑も文学的な関心から経営思想との比較対照まで多岐にわたり、予定の時間をややオーバーする活発な議論となりました。

安藤 究(同研究科准教授)
Page 15 of 28« First...10131415161720...Last »