菅原真准教授「外国人は憲法上『市民』の権利を持っているか?―フランスにおける最近の憲法院判例・憲法学説を素材に」

第18回 マンデーサロン 2008年11月17日(月)

テーマ: 「外国人は憲法上『市民』の権利を持っているか?―フランスにおける最近の憲法院判例・憲法学説を素材に」

講師: 菅原真准教授マンデーサロン

今回は本研究科・菅原真准教授が「外国人は憲法上『市民』の権利を持っているか?―フランスにおける最近の憲法院判例・憲法学説を素材に」と題し報告した。レジュメと各種資料にもとづき、1789年の人権宣言と略称されている人および市民の権利宣言などにより、「人」と「人権」、「市民」と「市民権」についての規定を行う。近代国民国家における「国籍」と「市民権」のあり方、フランスの共和主義的伝統による「公的領域からの外国人の排除」をあとづける。そしてグローバル化にともなう共和主義的伝統の「揺らぎ」、憲法改正によるEU市民の権利の憲法典への挿入とその効果、新しい市民権について問題提起した。法学者らしい憲法上文や憲法院判例、憲法学説を素材にした緻密で興味深い報告であった。
10月に赴任した菅原さんの「お披露目」ということもあり、学部生を含め20名の参加があり、30分余りにわたり活発な質疑が行われた。外国人の権利、市民権のあり方について、これまでの「共生」研究などと関わらせて今後とも議論していきたい。

山田明 (同研究科教授)

伊藤泰子さん三浦義章先生を偲んで 「聞こえない人のアイデンティティ」

第17回 マンデーサロン 2008年10月20日(月)

テーマ: 三浦義章先生を偲んで 「聞こえない人のアイデンティティ」

講師: 伊藤泰子さん(人間文化研究科博士後期博士課程)

マンデーサロン

10月20日(月)のマンデーサロンでは、大学院人間文化研究科博士後期課程の伊藤泰子さんの「聞こえない人のアイデンティティ」と題した報告と質疑が行われた。
報告はdeaf(聾者)とDeaf(ろう者)、医学的障害者と社会文化的違いを持つ人の違いから、聾者(ろう者)社会と聴者社会の関係を4つに分け、理想的アイデンティティについて見解が示された。パワーポイントを使った報告後、9月21日に放映されたNHK・ETV特集「手の言葉で生きる」のビデオを使い、手話と人工内耳装用などについて問題が具体的に提起された。報告やビデオ映像の際には、パソコンによる文字情報も流され、聾者への「情報提供」をまじかに見ることができた。質疑では聞こえない人のアイデンティティや手話言語、人工内耳などをめぐり意見交換が行われた。

今回のサロンは、この8月に急逝された本研究科の三浦義章先生を偲んで企画された。報告者の伊藤さんは三浦先生から直接指導を受けて、今回の報告論文などをまとめたという。サロンには三浦先生の奥様をはじめ、学外からも多くの方が参加され、全体で22名の参加者があった。

山田明(同研究科教授)

山本明代准教授 「ハンガリー文化の魅力を探る」

第17回 サイエンスカフェ 2008年10月19日(日)

テーマ: 「ハンガリー文化の魅力を探る」

講師: 山本明代准教授

サイエンスカフェ10月のサイエンスカフェは「ハンガリー文化の魅力を探る」という題で、山本明代先生による講義が行われた。最初に、ハンガリーの文化、歴史、地理的条件などが、写真や地図を用いて紹介され、その後、名古屋市立大学の提携校の一つである、ペーチ大学のあるペーチ市について詳しく説明がなされた。

ハンガリーの首都ブダペシュトから南へ180キロ、人口約15万6千人の中堅都市が、文化的にも、経済的にも発展し、独自の生活様式と文化の多様性を持つに至った歴史的経緯が、分かりやすく展開された。ハンガリーと言えば、首都ブダペシュトを最初に思い起こし、実際、それ以外はほとんど親和感のなかった私たちにとって、北・西・南からの文化の交流の土地であり、多元的な民族と文化と価値観を持ったペーチ市は、非常に魅力的に映った。

講義の後は、積極的な質疑応答がなされ、参加者の一人から「是非、ハンガリー語を聞いてみたい」という突然のリクエストに、山本先生がハンガリー語で自己紹介を披露する一幕もあり、参加者から拍手が起こっていた。学ぶことは面白い。知ることは楽しい。参加者の積極的に学ぶ姿勢に、大いに影響を受けた。

野田いおり (同研究科博士前期課程)

田中敬子教授「アメリカン・ゴシックの伝統」

第16回 サイエンスカフェ 2008年9月21日(日)

テーマ: 「アメリカン・ゴシックの伝統」

講師: 田中敬子教授

サイエンスカフェ

ゴシック小説とはイギリスの中世ゴシック建築の古城などを背景に、恐怖や怪奇を目的とする物語であったが、アメリカンゴシックの特徴はアイデンティティや人種問題が含まれることであると説明された。単なる怪奇小説と思っていたものに、アメリカの奴隷制度や人種差別の内面的問題が隠されていることを知った。

次に、具体的にエドガー・アラン・ポー、ウィルアム・フォークナー、トルーマン・カポーティのゴシック系作家の作品を詳しく解説していただき、恐怖、不気味さの裏に隠されている問題や意味が理解できた。これらの作家たちは、個人的にも文章は難しく内容はおもしろくないという印象があるが、一般的には難しく、読みにくいと思われる作品が多いだろう。しかし、それぞれのストーリーを簡単にわかりやすく話していただき、田中先生の解説には引き込まれてしまった。アメリカン・ゴシック系作家にマーク・トウェインの1冊『まぬけのウィルソン』が含まれていたことは私としては意外なことで興味深く思った。

アメリカンドリームの理想の国、アメリカの人々に冷静な批判的な目を向ける効果がこれらのゴシック系作家の作品にあったと思われる。最後には、だれもが読んでみようという気持ちになって、どんな本を読んだらいいか、お薦めの作品を聞くほど、参加者は文学好きになったのではないだろうか。また、私は文学作品に社会を見ることができることから、現代人が文学作品を読む必要性を感じた。

 伊藤泰子(同研究科後期博士課程)

福吉勝男教授「自助・共助・公助の福祉公共哲学

第15回 サイエンスカフェ 2008年8月24日(日)

テーマ: 「自助・共助・公助の福祉公共哲学

講師: 福吉勝男教授

福吉勝男教授サイエンスカフェ
冒頭、優秀な教え子の就職形態が不安定な契約社員に留まっている現状が投げかけられました。

福吉勝男「公共福祉志向の思想-その現実化の新たな試み」人間文化研究所年報第3号の「社会関係資本」を中心として語られました。かつて「社会資本」とは、主にハードな部門を指していました。「社会関係資本」とはソフトな部門も含める考え方です。そして、「自助・共助・公助」の意味を身近かな共助にあたる生活協同組合・労働組合・市民活動などの例を折り混ぜ分かりやすく語られました。「自助・共助・公助の福祉公共哲学」は、他分野の研究にも参考になります。

冒頭のお話は、自助だけで解決できない状況にあるを最後に痛感しました。

 中村裕子(同研究科研究員)

 

感想文から

・大学人(知的労働者の代表)としての社会的発言と問題提起はすばらしい。

・派遣で働いています。正職につけないことは、自己責任として始末されてきて、思考停止にさせられてきたように思う。しかし、それは間違っているのではないか?30代にまん延する絶望感は、正社員でも非正社員でも分断されることなく、今こそ連帯すべきではないかと思う。その意味で本日の「社会的ネットワーク」が大切なのだと思いました。

・一番印象に残ったのは、契約社員の問題です。正社員なろうと自助努力している若者、次世代の人々に対して、どう公助していくのかが緊急の問題と思った。

・経済至上主義の現代社会に於いて、今後自助・共助の必要がさらに一層重要な意義を持つように思われる。

・全体的に理解しやすかった。「活私開公」の話が良かった。

・たいへん興味深く拝聴しておりました。話と議論の組み合わせも良かった。

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